ロイヤルティ向上におけるカスタマーサポートの役割と重要性
顧客ロイヤルティ向上を軸にしてソーシャルメディアマーケティング戦略を考えたときに、カスタマーエクスペリエンスにおいて重要な役割を果たすのがCS(カスタマーサポート)である。
多くの企業が「お客様相談室」といった名称で設置しているCS部署は、通常インバウンド型、つまり、顧客のほうから相談や問い合わせが入り、それに受動的に対応するという形を取っている。
ソーシャルメディアマーケティング戦略においてはHelpingがCS的な役割を果たすことになるが、既存ファンクションとしてのCSとは異なり、カスタマーエクスペリエンスを競争力の要因とすることを目的としている。つまり、悩みを抱えている顧客に対してプロアクティブ(能動的)に顧客と会話をしながらサポートすることでエンゲージメントを行い、ロイヤルティ向上を行っていくことを目指している。
先述のNPSの改善という視点で、ソーシャルメディアマーケティング戦略を考えてみよう(図表8)。

NPSの改善は、アプローチとして「推奨者の維持・増加」と「批判者の減少」に大別される。「推奨者の維持・増加」にはEnergizing、Embracing、Helpingが、「批判者の減少」にはHelpingがそれぞれ対応する。
「推奨者の増加」と「批判者の減少」について、どちらを優先的に取り組んでいくかは、企業の置かれている現状によって異なるが、もし、企業の顧客層を見たときに批判者が優勢を占めるようであれば、Helpingから取りかかる方がいいかもしれない。Helpingは、一義的には「批判者の減少」のための取組みとなるが、同時に、顧客に感動体験を与えることで、批判者を推奨者に転換することも目指せるのである。
Helpingは、マーケティング活動上の意味合いで考えると、新規顧客獲得や既存顧客の取引拡大に対して直接的にインパクトを与える戦略ではない。しかしながら、顧客ロイヤルティの改善では非常にパワフルな戦略である。批判者減少による、ネガティブ口コミの減少やCSコストの減少といった、マーケティング上見落としがちな効果まで含めて考えたときに、企業の利益に与える影響は決して小さくはない戦略であると言える。
次回は、Helpingをはじめ、他のエンゲージメント戦略(Energizing、Embracing)について、具体的な事例を交えながら解説していきたい。