出店者側にとっても「まだまだ飽和するには早い」
消費者側から出店者側に目を向けてみよう。成長途上とはいえ、それなりにECの歴史も長い。十分過ぎる数のショップがそろっているのではないかとも思えるが、「まだ飽和した状況にはなっていない。楽天市場で取り扱っていない商材もたくさんある」と藤田氏。型番で買える商品のラインアップはそれなりに充実してきてはいるが、それでもカバーできていない方が多く、まだまだ飽和するには早いという。特に、ファッションなどの流行り廃りが速い商品ジャンルが手薄だという認識だ。
そうした出店者側の成長余地を見込んでか、地方自治体が地元の店舗に楽天出店を促す動きもある。町興しのために楽天を活用しようと、地元の会議所で楽天の出店セミナーを開催したり、全国の名産品を紹介する「まち楽」内では市長あいさつや地元発のコラム、スポット・イベントなどの情報コンテンツを楽天と共同制作している。現在、高知県、奈良県、松山市などの11の自治体とは連携協定を締結。協定とまでは行かないが、まち楽内に公式ブログを開設している自治体の数は25に達している。
楽天トラベルなどとも連携し、地方の情報を配信している

98%を取リに行く楽天の戦略
EC化率で言えば、まだ98%分の余地がある。消費者側・出店者側のどちらにとっても、ますますECの存在感は増してきそうだ。では、その98%を楽天はどのようにして取り込んでいこうとしているのだろうか。
主な取り組みとして、テレビとの連携、携帯・スマートフォンなどの新デバイス対応、パーソナライズの強化やTwitter活用のタイムセール告知による1人当たり購入総額の底上げといった施策が挙げられる。
テレビを使って非PCユーザーにアプローチ
まず、非PCユーザーを取り込む試みとしては、テレビを使ったプロモーションを行っている。今年2月には、ジュピターショップチャンネルの運営するショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」とのコラボ番組をレギュラー化し、楽天市場の店舗が売っている商品を同番組内で取り上げるようにした。詳細データは非公開だが放映があると「10分で数千個が完売する商材もある」など反響も大きい。

また、2009年11月下旬~12月上旬にかけては関西限定でテレビCMを展開。お薦めのタイムセール商品をCMで流し、楽天のトップページでも同じ商品を訴求するようにした。
「普段、楽天に興味が無くても、商材に惹かれて楽天に来訪してくれる人が増えています。高年齢層の女性はPCのリテラシーがまだまだ低い。逆にテレビ通販番組の視聴者は50~60代の女性がメインなので、補完関係にあるわけです。獲得コストを見るとやはりWeb中心のプロモーションがよいという判断になってしまいますが、今までリーチできなかった層にも広げていくようにしています」
新たな購入者層がモバイルに出現
これまで未リーチだった層という意味では、PCを持っていなかった若年層も、携帯を利用して購入するケースが増えてきている。例えば、ギャル系やキャバ系に分類されるファッションは、携帯サイトからの購入者の方がPC経由の購入者よりも多い。
楽天全体で見ても携帯経由の購入者数は増加傾向にあり、今年の正月の時期には、全体の25%が携帯からの注文だったという。新しいデバイスと言えば、iPhoneなどのスマートフォンもある。藤田氏はPCで楽天を閲覧していた消費者が、スマートフォンも使うようになるのではないかと指摘する。
「スマートフォンからのアクセスは増えています。今まではPCの前に限られていた閲覧タイミングが、外出中でも可能になっているのではないでしょうか。最近では、家電量販店で楽天での価格を見せながら『これよりも下げてくれ』とやっている人が増えているようです」
新デバイスの登場により、利用シーンも徐々に広まっているようだ。