情報の共有を促すコンテンツとは?
今まで紹介してきたように、講演内では繰り返し、口コミによって情報が広がていくことが強調されました。では、どのようにすれば情報が波及していくのでしょうか。
スコット氏は「くだらないコンテンツや悪いコンテンツをどんなに最適化しても、誰も共有したいとは思いませんが、共有される価値を持ったコンテンツや情報は、口コミで勝手に広がります」とし、口コミによる情報の共有を促すポイントを紹介しました。
下の表は、ここ数年にプレスリリースで最も使われた言葉のランキングです。表を見れば一目了然ですが、このような一見聞こえがよく形式張った言葉は、まったく効果を持っていません。会場でもあちこちで苦笑が起こっていましたが、確かに、買い手が実際に使うような言葉で書かれたものでなければ、買い手の心に響いて口コミで広がる可能性はありません。「これは、ウェブサイトで使う画像にしても同じで、市販のものでなく、サイトのオーナー(企業サイトであれば従業員や代表者など)やユーザーなどの実物画像を見せた方が効果がある」とも、スコット氏は説明します。
順位 | 言葉 | 回数 |
---|---|---|
1 | Innovate | 51,390 |
2 | Pleased to | 48,762 |
3 | Unique | 48,762 |
4 | Focused on | 40,964 |
5 | Leading Provider | 33,101 |
6 | Commitment | 29,621 |
7 | Partnership | 28,969 |
8 | New and Improved | 20,167 |
9 | Leverage | 19,243 |
10 | 120 percent | 16,916 |
11 | Cost effective | 15,454 |
12 | Next generation | 15,371 |
13 | 110 percent | 13,659 |
14 | Flexible | 13,656 |
15 | World class | 13,407 |
「強制しない、管理しない」次の時代のマーケティング
人に頼んで話題にしてもらっても、そこからさらに口コミが広がる可能性は、まずありません。興味を引くものであれば、放っておいても話題になって口コミで広がるものです。
これを説明するために、講演内では「Girls Fight Back!」の例が紹介されました。Girls Fight Back!は、女性作家Erin Weed氏が自分の女友達が殺害されたのをきっかけに2009年に設立した団体で、アメリカ各地で10代や20代以上の女性に護身術や身の安全を守るためのセミナーを提供しています。口コミによって、どんどんセミナーの注文は増え、マスコミにも取り上げられました。

管理しようとしないことです。共有されたいコンテンツは手放しましょう。
80年代に、まだどのコンサートも写真や録音/録画を禁止していた頃から、The Grateful Deadはコンサートに来たファンに対して、自由に写真やビデオを撮らせました。それがコンサートチケットの売上に貢献し、世界中で熱烈なファンを増やしました。
ここで考えなくてはならないのは、従来のマーケティングと同じ方法では、このようなオンラインでのマーケティングの効果の度合いを測る事ができないという事です。
オンラインでは、ブログ、検索エンジン、ビデオ、ポータル/ソーシャルサイトなど、人々があらゆる場所で情報を収集し、疑問を解決しています。どこまでコンテンツやサイトのコントロールを失えるかがポイントです。データシートのダウンロードに電子メールの記入を義務づけていては、共有にブレーキをかけてしまいます。
同時にビジネスの内容、専門分野や目的を明確にし、自分の顧客やファン層がどこに集まり、どうすればそこにアクセスできるかを把握することも大切だとスコット氏は語ります。
人々が共有したいと感じるきっかけを作りましょう。
以前、私はニューヨークNASDAQの鐘を鳴らすように招待されました。その際、知人を連れてきて良いと言われたので、友達ではなくTwitterで参加者を募り、NASDAQでミートアップを持ちました。もちろん、私が鐘を鳴らした場面は、ツイッターで参加者全員が中継しました。
また、2009年にオーストラリアのグレートバリアリーフにある島が開催した「The Best Job In The World」というコンテストの例も取り上げられました。このコンテストは、選ばれた男性が半年間無人島で暮らしながら島の様子をブログなどで世界に発信するというプロジェクトです。このコンテストのWebサイト「Island Caretaker Blog」は、マスコミやインターネットを通じて世界中で話題を呼び、「オーストラリア行き航空便の予約が34%増」という効果を出しているそうです。

このように、まず人々(市場)の注目を自分(ウェブサイト)に向け、次にキャンペーンへの応募やイベントへの参加、ツイッターでその経験をフォロワーに伝えるなど、注目してくれた人々に、してもらいたい行動が、しやすい環境を設定する事が大切だとスコット氏は説明します。
恐れていては前に進めません。「ブログに書くな」「ビデオの撮影は禁止」「これは消費者には理解できない」などと、ソーシャルメディアの理由を抑制していませんか?
米国空軍では、12人をソーシャルメディア担当に付け、Twitterには現在2,800人以上のフォロワーがいます。空軍の、あるキャプテンは「23才のメカニックに5,000万ドルの軍機を任せられるなら、facebookを任せても大丈夫だ」とコメントしています。
強制せず、管理せず、コントロールしようとしない事がオンラインマーケティングで成功するポイントだというのは、ビジネスオーナーには相当に勇気がいる話です。しかし、バイヤー・ペルソナを十分に理解して買い手側に立って考える事ができれば、コンテンツの無理強いを止めてバイヤーが求めるコンテンツが提供でき、リスクをかなり抑えることができるのではないでしょうか。