Helpingが企業にもたらす価値とは?
米Symantecの事例のように、1件ずつ顧客の質問に回答していくのは、かなり地道な作業であり、一見すると効率が悪いように思われるかもしれない。ここでは、Helpingの価値について、どのような考え方を取ればいいのかを説明したい。
ナレッジベースの強化
セキュリティソフトのように顧客の製品に関する悩みを要素分解し、完全に構造化して説明することが難しい商品においては、専門家や開発者といったプロの視点だけでカバーしようとするのではなく、むしろアマチュアである顧客の製品に対する新解釈や新用途についての声を拾い上げることで、ナレッジベースをより強固にしていくという発想が有効である。
インプレッション効果
Yahoo! ANSWERS(日本ではYahoo!知恵袋)のようなサイトの場合、一度、Q&Aを成立させてしまえば(理想としては、ベストアンサーに選ばれるような回答が望ましい)、検索エンジン経由で何人もの同じような質問を持った人が、そのページを見て悩みを解消できることになる。つまり、自社メディアの外部FAQサイトとしての役割を果たしてくれるのである。
エンゲージメント効果
TwitterによるReach outはどのように考えればいいだろうか? 掲示板と違って、Twitterはユーザー同士の一連のやり取りが時系列で一覧できるタイプのソーシャルメディアではない。また、一連の会話を追っていこうと思っても、Tweetがタイムラインに乗って非常に速く流れるため、アーカイブによる情報整理価値はそれほど高くはない。従って、外部FAQサイトとしての役割は期待しづらい。
Twitterのメディアとしての良さは、ソーシャルメディアの中でもとりわけパーソナル性と、Peer to Peer(ユーザー間)でのインタラクティブ性が高い点である。
もちろん、フォロワーの多いTwitterユーザーに語りかけることで、そのフォロワーが会話を見ているという意味でのインプレッション効果も期待できる。しかし、基本的には、企業と顧客がパーソナルに対話をするということによる、関係性の深化に最も向いているソーシャルメディアの1つであると言える。
自社メディアにおける顧客との関係性強化の取組み
米Symantecは、ソーシャルメディアへの参加だけではなく、「Norton Community」という自社メディア(ブランドサポートコミュニティ)でもHelpingを積極的に行っている(図表3)。
企業サイト上にあるFAQコンテンツをブランドサポートコンテンツのベースとしつつも、FAQにはない、新しい製品に関する課題について議論をすることで、ナレッジベースの強化を図るとともに、顧客との関係性強化を行っている。