さまざまなメッシュビジネス事例
こうした特性に該当するビジネスとして、よく事例としてあげられるのが、時間単位で車を使用できるZipcar。
自家用車は、一日のうち95%の時間は停まったままと言われている。つまり、ほとんど使っていないのに、駐車場や保険、メンテナンスも含めてかなりの金額を費やしている、実に不思議なモノ。
Zipcarのメンバーになると、Zipcardというカードキーが送られてくる。使用したい車種と日時、地域をウェブもしくはスマートフォンで予約する。当日、あらかじめ駐車されている場所まで行き、車のフロントガラスにZipcardをかざすだけでロックが解錠され利用できる。もしくは、なんとiPhoneアプリでも解錠できる。あとは元の場所に返すだけ。実に便利。
車を作りもしないし、売りもしない、まして修理もしない、ただ共有するだけのZipcarは、2001年のサービス開始以来どんどん成長し続け、2009年には前年比30%アップの、1億3000万ドルの純利益をあげているんだそうで、まさに、消費者のライフスタイルが所有から共有へシフトされていることを物語っている。
さらに、今やZipcarは、レストラン、ホテル、フィットネスなどの異業種との提携を進めてビジネスの領域を広め、なんとインクカートリッジのリサイクルまで行っている。つまり、車の共有をきっかけに、個人の移動にかかわるビジネスの、いわばエコシステムをしっかり創造しているわけで、この辺がしたたかというか立派。
また、子供服の交換サービスのここも注目。
子供の成長に伴って着る服のサイズも当然大きくなる。すると、着れなくなった服はご用済みとなる。これはやっぱり勿体ない。そこで、ThredUPに登録すると、他のユーザーと着なくなった子供服を交換できる。サイトに無料でリストップでき、誰か他のユーザーが欲しいと言ってくれたらThredUPから送られてくる箱に送り状ラベルを貼って服を詰めて送るだけ。このとき送料はかからない。また、逆にリストから気に入った服を選択すれば5ドルに送料を加算するだけで自分のものになる。
元々は成人の衣服の交換サービスだったのが、子供服に特化したのが大当たり。なにせ、子供は6ヶ月ごとにワードローブを総入れ替えするそうで…。メンバーはまるでギフトを受け取るように服の詰まった箱をわくわくして開けるらしい。
そういえば以前、CDやDVDの交換サービスを始めたLalaが、ダウンロード販売に押される格好で(そのビジネスモデルは)やめてしまったけれども、ThredUPの場合モノが子供服だけに交換ビジネスは十分成り立つ。
かわったところでは、ワイン愛好家のためのCrushpadが興味深い。
ここは、自分のワインを作りたいけれども、畑も道具も持たない人のために、良質のブドウ、発酵や瓶詰めのための施設、さらにはワイン作りのエキスパートのアドバイスまで提供してくれ、しかもその人のブランドで販売までできてしまうという至れり尽くせりのサービス。
創業者が自分でワイン作りを始めたのがきっかけらしいが、同好のユーザーのビジネス支援までやってしまうところがスゴイ。
メッシュビジネスは、こうしたモノだけにとどまらず各種のサービスをも含む。例えば、ソーシャルレンディングと呼ばれる個人間融資。
ここが現れたときは衝撃的だった。借り手は、家の修理のためとか車を買いたいとかビジネスを始めたいとかの目的と必要な金額、借入期間、希望の金利を登録する。貸し手は、借り手のリストからそのローン内容を確認して、融資金額と希望の金利を添えて入札する。借り手の目標金額に達したら、入札条件の良い順から借り手を決定していく。途中で何件入札があって、いくらまで調達できているかが常にサイト上でオープンに表示される。
ちなみに日本では、maneo(マネオ)が融資総額3億円を超えて健闘している。
ついでだが、このソーシャルレンディングで、音楽に特化したのがSellaBand。
ここでは、応援したいバンドのレコーディング費用をファンが共同で出資するという仕組み。目標額に達したら一流のプロデューサーがついて、最新の設備が完備したスタジオでレコーディングできる。ただし、出資者は目標額に達する以前に心変わりして他のバンドに鞍替えしても構わない。その辺は厳しい。
ちょっと変わっているのは出資者のメリットで、CDの売り上げの何%を分配とかは全くなくて、アルバムを無料でダウンロードできるとか、サイン入りのTシャツをもらえるとか、言ってみれば寄付へのお礼と大して変わらない。ただ、それが出資者のある種誇りでもあるわけで、そこをうまくアレンジしたビジネスと言える。
サービスといえば、共同購入で今や大流行のGrouponもそのひとつ。
地域ごとに毎日、大幅に割引される商品やサービスが続々と提供される。規定の人数に達すれば、その割引価格でゲットできるという非常に判りやすいルール。ローカルビジネスに一役買っているという意味でも、メッシュビジネスの優等生。日本では、この夏、クーポン共同購入サイト「Q:pod」を運営するクーポッドを買収したのが記憶に新しい。
不動産で言うと、旅行中の自宅を貸し借りするのもメッシュビジネスだが、ビジネスオフィスを共同で使うという発想もある。CoWorking(コワーキング)と呼ばれるそれは、主にフリーランサーが共同で利用するワークスペース。
サンフランシスコのここCitizen Spaceがその代表例として名高い。通常の賃貸契約ではなく、スポーツジムのように好きなときに空いている席を利用できるメンバーシップ制が多い。利用者はただそこで仕事をするだけではなく、そこで出会うメンバー間で情報を共有したり仕事を協業したり、またセミナーやワークショップを開いたりして、個人事業者に不足しがちなコミュニティとしても機能する。
手前みそで恐縮だが、実はボクも神戸で6月からカフーツというCoWorkingを運営している。まだ、利用者はそう多くはないが、日本でも終身雇用や年功序列が現実的でなくなった今、個人事業者の新しい働き方として徐々に知られるようになってきた。ちなみに、今年は東京(経堂)や大阪(十三)でもCoWorkingが始まっていて、今後各地で産声が上がればそれぞれと連繋して利用者の利便性を高めたいと考えている。
これらはほんの一部だが、姿形は違えどもいずれもユーザー自身に「共有」関係を結んでもらうことで、ひとつのビジネススタイルとして成立させていて、海の向こうではメッシュビジネスが大いに勢いづいてきている。








