Q.中国で事業を滑らせないために気をつけていることを教えてください
中国はチャンスが多い市場であるという一方で、色々なリスクも存在しています。人口が多いため過当競争が起きやすかったり、人件費が安いため価格競争も容易に起こりやすかったりします。
対策としては、いつも他社との差別化をしていく必要があると考えています。また、データを過信せず、方向性を見極めるために現場で市場の流れを肌で感じながら常に市況を注視し、その流れを無視しないようにすることが大事だと思います。データで見るのと、現場で見るのは異なっている場合もあるためです。
また、先ほども述べましたが「人」に関することが最も大切であり、最も難しいことだと思っています。社員にしても、クライアントにしてもそうです。ともすれば、社内外でだまされたり、不正な要求をされたりもします。中国ならではのこともあれば、そうでないこともありますが、大切なことは“現地に合わせながらも日本でのやり方や正しいことを貫くこと”だと思います。マーケティングなどでは、もちろん現地に合わせなくてはいけませんし、中国人の目線に立って考え、ニーズにマッチするものを柔軟、かつスピーディーに提供していかなくてはなりません。
しかし、その逆に、正しいことや日本でのやり方を守らなくてはいけないところ、貫かなくてはならないところもあります。会社での理念や方向性といったものを決め、社員やクライアントを大切にし、それぞれが幸せになるようにと長期的な視点に立って考え、行動に移すこと。それらを目指して、ブレず、騙されず、騙さないこと。相手に合わせるところと貫くところ、それぞれ線引きをシッカリ行うことが大切だと思います。
Q.これから中国市場に進出しようとする企業に向けて一言アドバイスをください
中国市場もインターネット市場も、非常に速いスピードで変化・成長しています。今までのデータに基づいて立てた目標が、いきなりその10倍以上の数値を達成してしまうこともあります。
リスクは数え上げればキリがないほどありますが、それをしていても仕方がありません。中国で失敗している企業は、現地のことを理解しようとせず日本のやり方だけを押し通し、「日本とはここが違うからダメ」「あそこが違うからダメ」と、日本を基準とした100点満点からダメなところを1つずつ見つけては減点していき、「あぁ、やっぱり中国は、まだまだだ」と色々なクレームをつけて帰って行きます。このような発想では、到底うまく行くとは思えません。発想を転換して加点主義で考え、「中国にはこんなチャンスがあり、市場がある」「こんなツールもある、こんな良い面もある」と、点数を積み重ねて行き、「もし問題やリスクあっても、それはこうすれば解決できる」と解決方法を考え、実行に移すことが大事です。
日本に外国人がやってきてビジネスをしようとしていたら、どんな外国人に成功して欲しいでしょうか? “ひたすら上から目線で日本のことを理解しようとせず、腰掛けでやってきて自国のやり方をゴリ押しで押し付けてくる外国人”に成功してもらいたいか。それとも“日本や日本人のことを理解しようとして腰を据えて行動し、日本のことを考えて良いこと・良いものを提供しようとしている人”に成功して欲しいか。このように立場を逆転させて考えるのも、良いと思います。
中国や中国人のことを心から理解しようとすること。その上で良いもの、役立つものを提供しようとすること。そして、加点主義で考えて7割を越えたら実行するようにするなど、市場の流れに乗り遅れないようにスピードを重視し、決断力を持って物事を進めて行くこと。こうしたことが重要になると思います。
Q.今後の目標を教えてください

弊社の目標・理念は2つあります。
1つはインターネットによって、世の中に役立つサービスを提供したり、世界を元気にすること。もう1つは、会社に関わる全ての人達(社員・クライアント・パートナー・株主)を幸せにすることです。
ビジネスが成功して大金を得たとしても、死んでしまうと、あの世にお金も地位も名誉も持って行くことはできません。「ログラスがあって良かったな。お陰で良くなった、元気になった、幸せになった、ありがとう」と、日本や中国、世界中の人から言ってもらえるようになりたいと思って言います。“人を元気にすること”“夢を持てるようにすること”“やる気が出ること”。こうしたところから、世界を良くしていきたいと考えています。
最近、日本は不景気で「元気がない」「活気がない」とよく耳にします。若者が旅行でも仕事でも「海外に行きたくない」「やりたいことが見つからない」といった話も聞きます。自殺してしまう子供が多いのも、社会に夢がないからだと思います。小学校でもいじめられ、中学校でもいじめられ、きっと高校・大学・会社とずっと変わらないのだろうな、と変化を望めない、夢も希望もなくなってしまうと、そうなってしまうのではないかと思います。「こうしたら良くなる」「あの人のようになりたい」などといった、成功モデルがないことも1つの要因だと思います。
ライブドアの堀江さんが活躍した時は、東大生でもベンチャーを目指そうとする人が出てきました。でも、結局つぶされてしまって(悪いことをしてしまったのは、もちろんダメでしたが)、また夢を抱けなくなりました。
自分で言うのもあまり良くないのですが、私のように若いうちに1人で中国にやってきて、成功したという人が出れば、「なんだ、あいつでもできるなら俺にもできる」とか「うちの会社なら余裕でできる」と思う人が増えるのではないかと思います。
イチローや中田、今は本田や香川が海外の厳しいリーグで活躍すると、日本人も勇気をもらえます。私自身が、そして弊社が、少しでも彼らのような存在になり、日本を元気に、そして夢や活気を増やせるようにしたいと思っています。
インタビューを終えて
山本氏は1980年生まれの若手経営者である。しかし、経営視点はその年齢とは裏腹に、既に確固たる信念を感じさせる。インタビューのとおり、山本氏は常にクライアント目線でのサービス提供、そして日本では当たり前だが、中国では当たり前ではない“相手を騙さないこと”を徹底している。
近年、ネットの分野でも中国に進出する企業を支援するサービスをよく見かけるようになったが、まだまだサービス内容に信頼を置きにくいものが多いのも事実である。一方、山本氏のログラスは「本当にクライアントが望むものか?」を愚直に追い続けているからこそ、日中問わずクライアントから指示を得られるのだろう。相手が日本人であろうと中国人であろうとクライアントに真摯に向き合う。この一貫した姿勢こそが、山本氏が中国で成功した秘訣なのではなかろうか。