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MarkeZine Day 2025 Autumn

現場リーダー必見! アクセス解析実践日誌

エンゲージメントは解析ツールで測定できるのか?
中間指標を作り出すスコアリング手法の考え方


実装:JavaScriptとCookieを活用する

 技術としては単純な考え方なので、工夫すればGoogle Analyticsでもある程度実現可能だ。技術的な詳細は、筆者のブログでフォローアップするとして、ここではGoogle AnalyticsとAdobe SiteCatalystを使う場合の実装の概要について、簡単に紹介しておく(参考:スコアリングの実装方法:SiteCatalyst編 【実践CMS*IA】)。

Google Analyticsの場合
  • Google Analyticsの「目標(英語版ではGoal)」と「目標値」という機能を使って、指定したURLにアクセスした時に指定した値を割り当てる
  • 「目標値」と「売上」の合計値は、「$インデックス」という指標として一部のレポートに表示される
  • 既存の計測に影響を与えないよう、プロファイルを新たに作ると良い
  • 「目標値」を使わずにJavaScriptとCookieを使って独自プログラムでスコアリングを行うと、「訪問(セッション)」よりも長い期間で値を保持できる
Adobe SiteCatalystの場合
  • 「訪問(セッション)」よりも長い期間で訪問者ごとに値を保持できる「カスタムコンバージョン変数」を使う
  • JavaScriptを使い、エンゲージメント系の機能が使われた時点で、重み付け済みの点数を「カスタムイベント変数」にセットする
  • 「カスタムイベント変数」は最大100個使えるため、各機能の利用回数を独立したイベント変数として記録しておき、計算指標を使ってレポート表示の時点でスコアリングを行うと、重み付けの妥当性検証やロジック変更が可能になる

分析:指標をどう読み取るべきか?

 前述の例では、スコアリングの結果として、次のようなレポートが得られる。

【図7】スコアリングの結果(値はダミー)
【図7】スコアリングの結果(値はダミー)

 【図7】は、ソーシャルメディアでの取り組みの効果を検証しつつ、TwitterとFacebookの違いを調べるため、ディメンションとしてはリンク元のチャネルの一部を抽出したレポートのサンプルだ。

 左側の4つの指標(訪問、直帰率、注文、CVR)は、よく使われる一般的な指標だが、これだけでは「ソーシャルメディアのコンバージョンは低い。まだ様子見段階である」というような単純な知見しか得られない。サンプル数が少ないため、CVRもあまり参考にならない。直帰率も、多様に解釈できる。例えば、Twitterをスマートフォン用のアプリで使っているユーザーは、つぶやきに含まれるショートURLをクリックし、1ページだけ閲覧して直帰することが多いかもしれない。

 では、今回の「エンゲージメントスコア」を含む【図7】の右の4つの指標を見てみよう。ソーシャルメディア経由で訪問したユーザーは、エンゲージメントスコアが高いため、「『いいね』や『Tweet』ボタンをよく使っている」「同一訪問内でのコンバージョン率は3.3%と低いが、平均再訪問回数が高いためサイトに戻ってくる頻度が高い」といったことが読み取れる。

 ここで、指標のアトリビューションが活きてくる。通常の計測方法(ラストタッチのアトリビューション)では、再訪問時の流入チャネルにコンバージョンが割り当てられてしまうが、初回訪問時のチャネルにもコンバージョンを割り当てるように算出(ファーストタッチにアトリビューション)しておくことで、さらに踏み込んで分析できる。例えば、「ソーシャルメディア経由のユーザーは手が空いたときに細切れで何度もアクセスしている」という仮説を立て、各ソーシャルメディアの注文への貢献度(【図7】右から2・3列目)を確認し、エンゲージメントスコアと比較しながら検討することが可能だ。その結果、「ソーシャルメディア経由の訪問者は、何度も訪問を繰り返して購入に至っている」といった高度な仮説検証ができるわけだ。

 まとめると、「ソーシャルメディア経由のユーザーは直帰率が高く、コンバージョン率が低いので一見パフォーマンスが悪いが、他のユーザーとの共有を行い、自身もサイトに戻る率が高いため、間接・長期的には優良なユーザーである」というような分析が、スコアリングの手法を用いることで可能になる。

スコアリングを最適化につなげるためのポイント

 『訪問者がサイトやサービスとエンゲージすることで、長期・間接的に売上増などのビジネスゴールに貢献する』と想定しているからこそ、ソーシャルやインタラクティブな機能を提供しているはずだ。その結果としてのエンゲージメントスコアとコンバージョンの間の相関関係を示すことができれば、取り組みの妥当性を主張したり、予算や人員強化などの意思決定が容易になるだろう。

 最後に、スコアリングで得られた指標を活用して最適化につなげるための留意点について、ポイントをまとめておこう。

1. スコアリングのロジックは見直しが必要

 サイト上の行動をどう解釈するか、は仮説に基づいている。計測結果も、アクセス解析ツールやサイト構築方法による技術的な制約を受けている。取れる範囲で取ってみた結果でしかないため、数字に違和感がある場合は、ロジックを見直す必要がある。数字の過信は危険だ。

2. スコアの絶対値に意味はない

 スコアリングによって得られる数値は恣意的に操作した値であって、その絶対値に大きな意味はないため、『1万点を月間の目標値にして高めていく』といったような使い方は、あまり適切ではない。また、全体の合計値の変化を時系列で調べるのも、改善アクションにつなげにくいため、実りが少ない。サイトの最終的な成功指標はコンバージョンや売り上げなどのゴール系KPIとして定義した指標であって、それ以外は中間指標でしかないのだ。

3. ギャップを見つける

 では、中間指標の存在意義は何か? ディメンション(グラフの左側に表示される区分)の粒度や比較対象を目的に応じて変更し、ゴール系指標と中間指標の値の違いを見つけるのが重要だ。値に違いが出た場合は、何らかの理由があるはずなので、仮説を立てて、それを検証するために別の指標を追加し、さらに深堀をしていく。普段から多様な指標を取得しておくと、この検証が楽になる。

次のページ
スコアリングの応用シーン

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この記事の著者

清水 誠(シミズ マコト)

Webアナリスト/改善リーダー。

1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebコンサルティングやIA・UI設計に従事した後、事業会社側へ転身。UX/IAやデジタルマーケティングの導入による社内プロセス改善の推進と事例化を行っている。ウェブクルーでは開発・運用プロセスを改善し上場を支援、日本アムウェイでは印刷物のデジタルワークフローとCMS・PIMを導入、楽天では...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/10/18 16:12 https://markezine.jp/article/detail/13672

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