4つの軸で捉えるGoogleの広告ビジネス発展の経緯
Googleの広告ビジネスは、どのように発展してきたのか? その経緯を振り返ってみよう。
下の表は、Googleの広告ビジネスに関連する主な出来事を、(1)ターゲティングメニューの拡充、(2)ディスプレイ広告市場への挑戦、(3)PC・モバイル・テレビ・ラジオなど配信先デバイスの多様化、(4)広告配信・流通事業の拡大という4つの軸で区切り、一覧にまとめたものだ。
上記表の4つの方向性から、(ざっくりとではあるが)これまでのGoogleの広告ビジネスの流れをまとめると、次のようになる。
2000年代前半~:検索連動型広告市場の拡大とターゲティング機能の進化
2000年代前半における進化の方向は、“一検索サイト”としての検索連動型広告ビジネスの確立・成功であった。米国のみならず、全世界での検索連動型広告市場とそのシェアの拡大である。
また、この時期から現在まで一貫して行われているのが、ターゲティング機能の改善である。広告の表示地域や言語、時間帯など着実に進化を続け、AdWordsというプラットフォームの機能的強化に貢献している。
2003年~:広告配信先の拡大
その次は、アドネットワークビジネスである。AdSenseプログラムを開発することで、大小さまざまなサイト運営者に対して検索連動型広告とコンテンツ連動型広告による収益機会を提供し、アドネットワーク運営者となった。つまり、広告の配信先を自サイトから他サイトまで拡大したことになる。
2005年~:ディスプレイ広告への参入
アドネットワーク事業者となったGoogleは、提供する広告フォーマットの多様化と、それに伴うクライアント層の拡大を目指す。ディスプレイ広告市場への挑戦である。2005年にディスプレイ広告の提供を開始し、翌2006年にはYouTubeを買収した。Googleのディスプレイ広告市場への本格的な挑戦を象徴する出来事であった。YouTubeは同社のディスプレイ広告のショールーム的な役割となり、ブランディング志向の広告主との関係構築や、Googleのディスプレイ広告ビジネスの成長の大きな推進力となった。
2006年~:配信先デバイスの多様化
Googleがこのディスプレイ広告市場への挑戦と同時期に進めたのが、PC以外の多様なデバイスに向けた広告配信の取り組みだ。2005年にモバイル検索をサービスイン。翌2006年には、当時モバイルインターネット環境が世界で最も発展していた日本でのサービス提供も開始した。同年7月にはKDDIと、翌2008年にはNTTドコモと提携。これにより、携帯キャリアのシェアから単純に考えると、キャリアの公式サイトで検索をするユーザーの8割がGoogleの検索サービスを利用し、広告を目にすることとなった。また、Googleモバイルサイト自体も多くのユーザーを獲得し、日本のモバイルリスティング広告市場で、No.1のシェアを収めることに成功した。
ほぼ同時期には、米国でラジオ・テレビ広告事業にも着手している。2006年末にスタートしたラジオ広告事業は既に撤退したが、2008年5月より取り組んでいるテレビ広告事業は継続されている。
2008年~:新たな広告流通事業への進出
そして、近年の大きな展開と言えるのが、広告配信・流通事業の拡大である。AdSenseプログラムの開始以降、アドネットワークとしての規模を拡大してきたGoogleが、2008年にインターネット広告配信の大手企業「DoubleClick」を買収したことは、業界では大きな話題となった。
近年、米国では広告主とメディアサイトが、リアルタイムの入札形式によって直接広告枠の取り引きを行う「Ad Exchange」が新しい広告流通として形成されつつある。同社はDoubleClickが持つ広告配信技術・システムを基に、それらのサービスを準備。その後、Ad Exchangeへの自動入札サービスとも言える「DSP(デマンド・サイド・プラットホーム)」のサービス提供会社であるInviteMediaの買収も行った。主要な周縁機能を2年ほどかけて準備したことになる。
本稿では、Ad Exchange等の詳説は割愛させてもらうが、眠っていたメディアサイトの広告在庫を活性化させるという意味で、大きなインパクトとなるだろう。今後、広告会社としてのGoogleの存在感は、さらに高まることが予測される。