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あの先進企業に密着!第1回「Google」

「コンピューター中心」から「ヒト中心」の世界へ
― Facebookとの比較から見るGoogleが迎えた新たな局面

GoogleとFacebook Webの2大巨頭の業績推移を比較

 続いて、GoogleとFacebookの業績推移を比較してみたい(図3)。Facebookの売上高は公式には公表されてはいないため、筆者の推測値である。2010年度の売上高20億ドルは、ゴールドマンサックスが5億ドルを出資したニュースと共に様々な情報ソースから伝わった値であるため、一定の信頼を置いても問題ないだろう。

 おそらく、多くの人が驚くのではないだろうか。最近騒がれているFacebookの売上高推移は、Googleと比べると、かくも見劣りするものなのかと。

図3 GoogleとFacebookの売上高推移の比較
(出所:Googleの売上高はGoogle IR公表資料より。Facebookは各種報道から筆者推測)
図3 GoogleとFacebookの売上高推移の比較(出所:Googleの売上高はGoogle IR公表資料より。Facebookは各種報道から筆者推測)

 創業から2002年までの4年間は売上を伸ばすことができなかったが、そこからの躍進が凄まじい。では、この両者の売上高の時間軸をずらして、創業からの年数で比較してみた場合どうなるだろうか(図4)。

図4 GoogleとFacebookの売上高推移の比較、創業からの年数換算
(出所:Googleの売上高はGoogle IR公表資料より。Facebookは各種報道から筆者推測)
図4 GoogleとFacebookの売上高推移の比較、創業からの年数換算(出所:Googleの売上高はGoogle IR公表資料より。Facebookは各種報道から筆者推測)

 この図を見ると非常に相似形である気がしてくるのは、筆者だけではないだろう。Facebookの躍進が、今年まさに始まろうとしているのである。筆者の個人的な推測であるが、Facebookは2015年には利用者10億人、売上高2兆円を突破する企業に化けていてもおかしくないのではないかと考えている。その場合のARPU(ユーザー1人あたりの月間売上高)は167円/月であり、2010年度のグリーとモバゲーのARPU、それぞれ581円、380円の半分以下の水準となる。現状、Facebookの利用者の内、4割にあたる2億5000万人が新興国を占めるという点を考慮したとしても、グリー水準のARPUを達成すれば2兆円という規模が見えてくることになる。

「コンピューター中心」から「ヒト中心」へ

 それぞれWebビジネスの寵児として注目を集める2社であるが、この2社が目指すべきところは全く異なる。

 一言で表すならば、Googleの世界は「コンピューター中心」であったものが、Facebookの世界は「ヒト中心」と言えるだろう。

図5 GoogleとFacebookの違い(出所:野村総合研究所)
図5 GoogleとFacebookの違い(出所:野村総合研究所)

 もう少しその点を詳しく見て行きたい。大きく3つの相違点があり、そのことが決定的な違いを生んでいる。

 まず、GoogleおよびFacebookにとって、利用者の見え方が全く異なる。実名や個人プロファイルの入力が必須であるFacebookと、登録なく利用できるGoogleの最も根元的な違いと言える。

 2点目であるが、これは少々複雑である。Googleは、「存在しているものから引き出す」のである。つまり、Googleは過去に蓄積されたものの中から、キーワードと最も関連性が高いと思われる情報を、瞬時に利用者のもとへ届けるのである。Googleは60万台以上のサーバが、毎日世界中のホームページやブログなどをスクロールしている。独自のアルゴリズムによって、ページとページの関係をグラフ化していく。コンピューターが、まさに不眠不休で世界中のWebサイトを見に行くことで、キーワードに関連性が高い検索結果を瞬時に提供することができるのである。

 一方、Facebookは、過去の情報から引き出すのではない。利用者のアクションに応じて、情報が新たに創造されるのである。例えば、“放射能の脅威”について知りたいとき、Googleの場合は、そのキーワードに最も関連性が高い検索結果を提供してくれる(2011年4月17日現在376,000件)。FacebookやTwitterの場合は、ユーザーは“放射能の脅威”についてコメントをする、もしくは、とあるページのリンクを貼りそれについてコメントをする。その結果、「友達」という繋がりやフォロワーから、コメントや評価、検索結果からは得られない新たな情報源、「いいね!」という反応が得られる。まさに、人と人との結びつきが、「存在していない情報を創り出していく」のである。Googleの場合は、キーワードを入力してもしなくても、起こり得る結果(検索結果)は変わらない。それに対して、Facebookの場合は、利用者自身がコメントを入力するかどうかで、未来(得られる情報)は都度変化するのである。

 最後の3点目は次のとおりである。Googleは、誰が操作をしても同じ結果なのである。少女であれ、シニアであれ、[放射能の脅威]というキーワード入力に対する検索結果は変わらない。誰が検索ボタンを押したとしても、結果は同じ376,000件である。それに対してFacebookの場合は、友達のつながりによって、まったく未来が変わってくる。一人ひとりで目の前を流れる情報という景色は全く異なるものになっていくのである。

 未来と言えば、GoogleおよびCIAが出資している企業にRecorded Futureという会社がある。

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変貌を遂げつつあるWebの世界 - 岐路に立たされるGoogle

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この記事の著者

小林 慎和(コバヤシ ノリタカ)

(株)野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタント
ビジネス・ブレークスルー大学准教授、NPO法人ガイア・イニシアティブ
経営コンサルタントとして、IT業界、エレクトロニクス業界を中心とする企業に対して、新規事業立上、海外展開、M&A、営業改革、組織改革など...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/05/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/13710

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