Q. Web制作業界において、今以上に貴社が抜きん出るために、どのようなことを念頭に置いていますか?
集中と選択です。自社の強みがなにかを問い続け、勝てるマーケットで局地戦を繰り返し、存在感を勝ち得ていくしかありません。
具体的には「スマートフォン」「オフショア開発」というキーワードに絞って勝負することになると思います。まだ調査中の段階ですが、シリコンバレーにスマートフォンの受託制作やオフショア開発の営業に行こうかと考えています。勝てるキーワードに沿って、ドンドン事業を拡大していくつもりです。
あとは、人の成長を促進させることです。絞ったキーワードの中で受託以外のビジネスもやっていきたいと考えています。自社でやるというよりも、分社してやっていくイメージでしょうか。社長を新たに輩出していくため、人材の成長は欠かせません。
Q. 社内活性化で工夫されていることはありますか?
当社のビジョンは「みんなでおいしいご飯を食べれる会社になります」です。とにかくよいコミュニケーションが行われるよう努力しています。毎月飲み会を開催していますし、役員3名がそれぞれ週1回はランチ会を開催しています。
当社を選んだポイントを社員に聞くと「風通しがよさそうだ」という声も多いです。上司とペアになった日次ミーティングや月1回の部長面談など、仕事面でのコミュニケーションも充実させており、モチベーションの維持向上に努めています。
Q. ベトナムでのオフショア開発はどのように始まったのでしょうか?
2008年に、あるWeb制作会社からベトナム法人を売却したいという話を頂き、同年12月にその企業から買収する形でスタートしました。ちなみに、ベトナムは学生時代にバックパッカーをしていた際、1ヶ月程滞在した経験があり、思い入れもあった国でした。

Q. ベトナムでは現在何名体制で開発を行っているのでしょうか?
70名体制です。2011年度内に100人体制までは自然に拡大する予定です。
Q. ベトナム事業立ち上げで苦労されたことを教えてください
買収当初は従業員数が15名位で、50名程度に拡大するまでは赤字が続いていました。特にキャッシュフローの赤字が辛かったですね。
また、日本側の発注体制や管理体制が整っておらず、なんでもかんでもベトナムに開発案件を投げ、都度チャレンジ案件をやるような感じになってしまっていました。ナレッジも蓄積されず、プロジェクトがうまくいかないことも多くありました。
今思い返すと90%位が、日本側の責任で品質が悪くなっていたと思います。
Q. ベトナム人エンジニアと日本人エンジニアで、気質やワークスタイルに何か大きな違いはありますか?
特に違いは感じませんが、ベトナム人は理工系の大学卒で、いわゆる職業エンジニアが多いです。
コードを書く単純なスピードはベトナム人のほうが早いと言われています。個人的な感覚ですが、日本人のエンジニアの方がクリエイティブだと思います。コードがキレイですね(笑)
キャリアアップに対するプライオリティは、ベトナム人は非常に強いです。残業を嫌う人が多いのですが、その理由に「勉強できないから」という人が結構いるのには驚きます。
その他には、30代のマネジメント職がベトナムにはほとんどいないので、人を管理するというのがどういうことなのか分からない人が多いように感じます。モデルとなるキャリアを持つ人が、身の回りにほとんどいないわけです。国民のほとんどが20歳代以下という国ならではの問題でしょうね。そのため、マネジメント職を目指す人は少なく、語学力やプロジェクトマネジメント力などのテクニカルスキルにプライオリティを置く人がほとんどだと思います。
Q. 海外でのオフショアを成功させるためのポイントを教えてください
一にも二にもコミュニケーションです。プロジェクト管理ツールのRedmineやSVN、メーリングリストやSkypeによる定期的なコミュニケーションは欠かせません。
キックオフ時はもちろん、週1回の定例、日々の進捗確認など、かなり密にコミュニケーションをとるべきだと思います。これはなにもオフショアに限ったことではないのですが、言葉の問題もありますし、特に意識していますね。
Q. 今後の目標を教えてください

長期的には、Web制作会社の中で売上・従業員数などでNo.1企業になることです。
短中期には「スマートフォン」「オフショア」のキーワードで、よりグローバルに展開していきたいと考えています。各地に分社した社長がいて、月1回程度グループで社長会を開くというようなイメージは素敵だなと思っています。
インタビューを終えて
Web制作という業態はインターネットが世に出た当初より存在するビジネスで、Web関係のビジネスとしては最古参業態の一つといっても過言ではない。川勝氏がバイタリフィを創業したのは2005年であり、「いまさらWeb制作?」という声が一般であったであろう。
そのような状況下でも、バイタリフィは時代のニーズを掴みながらも自社が勝てる強みを徹底的に磨き、今のWeb制作業界で存在感を高めてきた。また、多くのWeb制作会社が海外オフショア開発を失敗・清算しているところを尻目に、バイタリフィは大成功を収めている。
勝てるマーケットで局地戦を繰り返し、時代のニーズを読むセンスをもつ。
これらを正しく行えば、後発でも勝てる事業に成長させることができるということが、川勝氏へのインタビューから分かった。