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中国Webマーケティング最前線

中国版Twitter「Weibo」のビジネス利用動向と注目の新サービス ライトブログ「Qing」の概要

日本とは少し異なる企業とユーザーのコミュニケーション

 VANCLのファンアカウントでは、“フォロワーが楽しめるように運用されている”と紹介しましたが、これは日本と中国ではユーザーと企業とのコミュニケーションにも、若干の違いがあるためです。この違いは、以前、当社がウェイボーを活用してオンラインゲームのプロモーションを行った際に実感したことでもあります。

 ある時、そのプロモーション用アカウントに、フォロワーからゲームに関する質問を受けました。回答したところ、その後、立て続けにゲームに関する質問をされ、やりとりの後半はゲームに関する質問ではなく、今夜の夕飯の相談やおススメのレストランを聞かれる始末に。また、別のフォロワーから、「ゲーム内のキャラクターがある有名タレントに似ている」と言及されたので、「実はそのタレントにインスパイアされた」ということを明かしたところ、大変喜ばれたことがありました。その際も同じようにやり取りが続き、ウェイボー担当者とフォロワーの間で、最近のおススメタレントを紹介しあうところまで、話題が広がっていきました。

 この事例だけではなく、中国では企業とフォロワーとの間での大変フレンドリーなやりとりが行われます。日本でTwitterやFacebookなどの企業アカウントを運用する場合、表現やコミュニケーションが硬いものになりがちです。これは良し悪しではなく、中国の企業とユーザーとの間のコミュニケーションにおける特徴と言えます。

 では、なぜ中国の企業アカウントでは、こうしたフレンドリーな対応が浸透しているのでしょうか。

 背景を探っていくと、中国ではウェイボーの登場以前から、タオバオなどのオンラインモールにおいて一般消費者とのコミュニケーションが活発に行われていたことが分かります。タオバオには、消費者と出品者間でコミュニケーションをとるための「チャット機能」があり、値引き交渉などが日常的に行われています。

 最近では「淘宝体(タオバオスタイル)」と呼ばれるネットスラングまで存在します。これは、タオバオ内でのやり取りから生まれた略語や表現です。例えば、出品者が自分の商品を紹介する際に利用する「親!」という言葉。これは、「親愛なるカスタマー」という意味の言葉を短縮させたものであり、消費者に気軽に呼びかける意図で使われています。

 また、出品者がチャットでのやり取りの最後に「哦!(オウ!)」という言葉で、締めくくるのも流行っています。これは、「ありがとうね」や「おいしいね」など日本語で語尾に「~ね」と付けるニュアンスに近いものです。語尾に「~哦(ね)!」と付けることで、消費者に親近感を与える効果があると思われます。

 こうしたコミュニケーションは、消費者から“出品者がフレンドリーな対応してくれる”と受け取られ、好評を博しています。その結果、最近では多くの出品者が好んでこのような表現を使うようになっています。しかし、日本でこのような「軽い」表現のカスタマーサポートをしていたら、消費者には不適切な対応として受けとられる可能性が高いでしょう。

 このように中国では、日本からすると失礼にあたる位フレンドリーな、または柔らかいオンラインコミュニケーションをすることが、消費者の間で許容されています。さらに言うと、友達と接するのと変わらないような接し方を企業がすることで、消費者はよりその企業を身近に感じてもらえる風土があるようです。

 もし、日本企業が中国のソーシャルメディアを活用する場合、日本と同じ使い方をするのではなく、「郷に入っては郷に従う」ことが重要になるでしょう。

ウェイボーは既に古い? 次はライトブログか?

 このように、現在、中国市場で急成長しているウェイボーですが、実は早くもネクストウェイボーとして注目を集めているサービスが表れています。それは、「ライトブログ(軽博客)」と呼ばれる種類のサービスです。

 2011年7月21日にSINAが「Qing」というサービス名で、ベータ版としてスタートしたばかりですが、開始初日でいきなり100万人以上の登録者を集め話題となりました。

 ウェイボーはTwitterと同様にテキストによる情報発信がメインになっていますが、Qingは文字だけでなく、画像や動画での情報発信がしやすい仕組みになっています。さらに、自身のアカウントのレイアウトを大胆にカスタマイズできます。

 ウェイボーがTwitterだとすれば、“QingはTumblrに近いサービス”と考えれば想像がつくでしょうか。

 表現力という観点からすると、ウェイボーのようなマイクロブログは画像をアップすると、どうしても画像が粗くなってしまったり、画像を編集して載せたりすることが困難です。しかし、Qingであれば1ページに最大20枚の画像を掲載したり、豊富なテンプレートを使って画面レイアウトをカスタマイズできたりと、よりリッチな表現を楽しむことができます。

 ウェイボーのシンプルさに比べ、Qingはデコレーションをする楽しみに溢れており、特に若い女性に人気が出そうなサービスです。

 このように、中国でも様々なソーシャルメディアが登場しています。筆者の主観にはなりますが、次のようなイメージで各サービスを整理することができると思います。

中国ソーシャルメディアの比較
サービス名 別名 例え 補足
ブログ 微客 テーマに対して深く掘り下げて書くことが可能
マイクロブログ 微博 新聞 内容は簡潔に書かれ、時事的なものが好まれる
ライトブログ 軽微客 雑誌 自分の趣味・嗜好性が出せ、写真などが多彩な表現が可能

中国Webサービスは進出前のテストマーケティングに最適

 ご存知のとおり、日本国内の多くの市場はもはや成熟しており、拡大ではなくむしろ縮小に向かっています。とはいえ中国は、政府の情報規制や偽物販売など参入以前に解決しなければならない課題が多いため、参入障壁が非常に高い市場だと感じられることでしょう。

 しかし、その課題や障壁をクリアする術を把握すれば、そこは13億人の市場。さらに、中国内陸部はこれから消費力が爆発的に増加すると言われており、いまだに大きなチャンスが眠っています。

 日本国内でドメスティック企業同士が限られた需要を奪い合うのには、限界があります。巨大市場の中国を目指すことは、企業規模に関わらず成長を求める企業であれば、避けては通れない選択肢の一つと言えるでしょう。

 今回紹介したウェイボーなどの中国Webサービスは、開始当初から爆発的に利用者が集まり、既に数億人の利用者を抱える巨大なプラットフォームになっています。そして、これらのWebサービスに集う中国人利用者に向けてであれば、日本からでも、アカウントを作るだけでアプローチすることが可能です。いきなり中国進出することが難しければ、まずは貴社の商品やサービスのアカウントをウェイボーに持ち、つぶやいてみることで、新たな発見や接点が生まれるかもしれません。

 多額の投資を必要とせず、気軽に始められるウェイボーは、中国市場を気軽に把握する術として、どのような企業であれ試してみる価値はあるでしょう。

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この記事の著者

矢作 嘉男(株式会社ハチワン)(ヤハギ ヨシオ(カブシキガイシャ ハチワン))

株式会社ハチワン代表取締役。New Jersey City University卒。
中国人観光客向けクーポンサイトなどインバウンド媒体を運営。
2011年、中国のインターネットプロモーション事業を行う北京博洛密網絡科技有限公司と提携し、中国向けプロモーション事業を開始。本当に成果の出る中国市場向けインターネットマーケティングのみをを提供し、インバウンド向けから中国現地進出向けまで数多くの実績を持つ。
プロモーションのご相談:info@813.co.jp

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/10/06 11:00 https://markezine.jp/article/detail/14356

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