スマートフォン向けメールマガジンの制作における課題
当社がスマートフォン向けメールマガジンを制作する上で感じている課題は以下の3点です。
(1) 「iOS向けメール」と「Android向けメール」の作り分けに手間がかかる
前述の通り、スマートフォン向けメールマガジンと言っても、受信する端末やメーラーによって表示のされ方が異なるため、スマートフォンを所有する全員に一斉同報配信を行うことはできません。
両方に対応させようとするとiOS向けとAndroid向けのメールをそれぞれ作る必要があり、それだけでも工数が倍になります。また、iOSとAndroidのメールクリエイティブを同等の見た目にしようとすると、Android向けのメールを制作する際にかなりの微調整が発生するため、マークアップ担当者泣かせの作業になります。
(2) 使えるタグ(HTML5、CSS)の細かな検証が必要
iOSではHTML5やCSS3が利用できるようになっていて豊かな表現ができるようになってはいるものの、すべてのCSS3のプロパティが利用できるわけではなく利用する際には細かな検証が必要になります。
(3) Androidのキャリア別、端末別、メーラーのバージョン別の検証が必要
当社で検証作業を実施している際に、あるAndroid端末でOSのバージョンアップがありました。その際にメーラーのバージョンも上がったため、旧バージョンでは問題なく表示されていたメールマガジンの表示が崩れてしまう現象が発生しました。同じ端末でもバージョンが変われば表示のされ方も変わる可能性があるので、全ユーザーに対応しようとするとかなり細かな検証が必要になってきます。
さらに、Androidは複数のキャリアから、さまざまな端末に実装されて発売されているため、検証する数も「キャリア×端末×メーラーのバージョン」と数が多くなり、検証作業自体に膨大な時間と多額のコストが発生します。そのため「どの端末までをサポートするか」といった線引きが必要になってきます。
これらの課題に対処するためには、当面はiOSの“メール(Mail.app)”とAndroidの“SPモード”の表示のみをサポートするようにすれば、手間を削減しつつ、市場のシェアの約5割超はカバーでき、スマートフォンらしいクリエイティブのメールマガジンを送ることができると考えています。
現在利用中のメール配信システムでもスマフォ向け配信は可能?
スマートフォン向けのメールマガジンを配信する際、通常利用しているメール配信システムでも大丈夫か? といった質問をよくいただきます。
通常利用しているメール配信システムが、HTMLメールを配信することができるようでしたら、特に問題なく配信ができます。ただ、AndroidのSMS/MMS(SPモードなど)に配信しようとすると、画像を添付ファイル形式で配信する必要があるため、ファイルを添付して送ることができる配信システムを利用する必要があります。
また、詳しくは次節で述べますが、スマートフォンユーザーのみにメールを配信するときには、「特定のドメインのメールアドレスの人だけに送信する」といった抽出ができる必要があります。
どうやってスマートフォンユーザーを見分けるのか?
スマートフォン向けメールを実施しようとする際、一番の問題になるのは「スマートフォンでメールを受信している人をどのように見分けるか?」という点です。
~@softbank.ne.jpのドメインを持つユーザーは、iPhoneを利用している可能性もありますし、通常の携帯電話(フィーチャーフォン)を利用している可能性もあります。また、Gmailを利用しているユーザーでも、iOSを利用しているかもしれませんし、Androidを利用しているかもしれませんし、PCブラウザのウェブメールで利用しているユーザーかもしれません。つまり単純にドメインだけで判別することはできません。
現実的には「スマートフォン向けメールを読みたい」というパーミッションをもらうのがベターな方法です。この方法であれば、確実にスマートフォンで読んでいただくことが可能です。
また、単純にドメインだけで判別することはできないと述べましたが、例外が1つあります。i.softbank.jpドメインのメールアドレスはiPhoneのユーザーしか利用できないので、i.softbank.jpを利用しているユーザーは、iPhone保有者とみなすことができます。i.softbank.jpのドメインのメールアドレスを持つユーザーに対しては、iOSに最適化されたメールを送ることができます。
今回の記事では、スマートフォン向けのメールマガジン制作において、実現できることや課題を紹介しました。現状では、まだまだ課題の多いスマートフォン向けメールですが、動画を表示させることができたり、CSSを利用することができるなど大きな可能性も持っています。
次回は実際にスマートフォン向けに最適化されたメールを配信し、ユーザーの反応を検証した結果をご紹介します。