DRMはクチコミと相容れるのか
この動きの速い世界にいると、半年前のことが半世紀前のように感じるのですが…筆者は『I.M.press 2007年3月号』でCRMとCGMマーケティング(以下CGMM)の関係について書きました。読まれた方もいらっしゃるかもしれませんが、その要旨は、「CGMMとCRMは『個』をつかまえにいく手法という共通点があり、連携させることでより効率的にターゲット獲得ができる」というものだったのです。
ところで、今回は切り口を変えて、CGMMとDRM…言い換えれば、クチコミとダイレクト・レスポンスの組み合わせです。こちらの関係はどうなのでしょうか?
第一印象で言うとこの二つ、あまり相性が良いようには見えません。特にデータベースマーケティング(以下DBM)的な顧客の囲い込みをしないDRM…つまり、ダイレクト・レスポンスのツールに特化した旧来のDRMは、およそCGMMと概念的にかけ離れたものなのですから。
旧来のDRMは、基本的に一般消費者の個々の潜在的/顕在化した嗜好(志向)を刺激して、直接商品またはサービスの購入・申し込みにつなげる手法でした。これに対し、CGMMは個人の嗜好にダイレクトに訴求するというよりも、特定の嗜好(志向)によって集まった既存コミュニティに対し、その中から優良顧客を見つけ出す、あるいはインフルエンサーを動かして商品をレコメンドさせ、購入行為にドライブさせる手法です。
つまり、DRMは基本的に「一見(いちげん)さん」を対象にしたショートカットの技術であり、CGMMは特定層からのピックアップのテクニックであるということになります。また、CGMMのコミュニティは、「企業」という枠で囲っていなくても存在する擬似的なデータベースであるとも考えられるでしょう。これに対し、CRMやDBMで使われるデータベース(以下DB)はまさにリアルなデータベースであり、形は違えども目的/手段に共通点があります。だからこそ、CGMM→CRMという連携も可能になったのです。
しかし、基本的に旧来のDRMはそれ自体にデータベースを持たない、ある意味で一期一会なマーケティング手法でした。データベースを持たないがゆえにクチコミの流れを「点」でしか捕捉できない…相性が悪かったのは、実はこのせいなのです。