調査項目を統一してデータを蓄積 卒業後の進路との連携で活用幅広がる
高校生の進学にかかわるすべての人に、必要な情報を提供する。これを可能にするのが、1970年の創業から進学事業が蓄積してきた調査データだ。
代表的なのは、高校生を調査対象とした「進学ブランド力調査」「高校生の進路選択に関する調査」だろう。進学情報を希望する数十万人もの高校生を対象にするなど、大規模な調査を労を惜しまず継続。自社のメディアにて、特集記事等の素材となるほか、大学の「知名度ランキング」「イメージランキング」など、キャッチーな切り口でプレスリリースも発行している。
「たとえば、2010年の調査では、『志願度』の関東部門1位は明治大学、『知名度』は早稲田大学、『就職に有利』は東京大学、『おしゃれ』は青山学院大学といった具合です。こうしたデータは、広告制作やコンサルティングの参考になるのはもちろん、毎年同じ項目で取っているので、高校生の意識の変化を如実に把握できて興味深いですよ」(小林氏)
実は、こうした比較ができるようになったのは10年前から。それ以前は、質問項目や調査対象が異なるなど担当者に依存し、データを蓄積するという意識は薄かった。それを統一したことで、過去データとの比較はもちろん、いまではキャリアや人材の研究機関である「リクルートワークス研究所」と連携し、大学生の進路との接続を検討している。
「もちろん、大学は就職するためだけに通うものではありませんが、就職に有利な学部、教育機関の人気が高いのは確かです。大学・専門学校の方々には、こうしたデータを活用いただき、ブランディング等に活かしていただければと思います」(小林氏)
このように、進学カンパニーが牽引する形で、「高校卒業後の進路」にかかわる人たちが変わりつつあるが、当然のことながら抵抗勢力も存在する。たとえば、教育という「聖域」に、データ分析やマーケティングなどを持ち込むこと、それを参考に迎合するのはいかがなものかという意見もあるのだ。しかし、それぞれの大学・専門学校の個性が際立ち、偏差値以外にも進路選択の基準が増えることは、教育機関にとっても、進学する高校生にとっても、しあわせなことではないだろうか。
「リクルートは、高校、大学、企業を結ぶことができる唯一の企業として自負しています。だからこそ、それぞれの齟齬を可視化し、問題提起を行なうことで、より良いマッチングができるよう、『進学総研』は今後も積極的な調査研究を行い、発表していきたいと思います」(小林氏)
高校生の進路と高等教育機関の今後を担うのはもちろん、マイ・ファースト・リクルートとしても、進学カンパニーのさらなる活躍が期待される。
