セルフ型ネットリサーチサービス「Fastask」を試してみる
2011年10月に登場し、利用者数を急速に増やしているセルフサービス型のアンケートサービス「Fastask」。従来のネットリサーチと比べて最大10分の1程度にまで費用を抑えられる上に、過去に実施したスクリーニング調査の結果を、調査主側が自由に何度でも追加費用なしに再利用できるといった利点がある。
そこまでの低価格化を実現できた理由は、従来人手を介していたプロセスを見直し、可能な限りクラウド化を図ったから。従って人手の入らないセルフ型のサービスとなったわけだが、リサーチ業務を進める上で、セルフ故の使い勝手の違いはあるのだろうか。
Fastaskにはどんな機能・サービスがあり、従来のネットリサーチとはどのような違いがあるのか。MarkeZine編集部が実際にFastaskで調査を実施することにした。
女性のソーシャルメディア利用状況についての調査を実施
今回は、MarkeZine読者にも役立つデータを提供できるように、「女性のソーシャルメディア利用状況」について調査を実施することにしよう。まずはトップのナビゲーションから「登録お申し込み」を選択。1ページ目に記載されている登録手順を確認した後、企業名などの項目を埋めていく。
充実のマニュアルで、セルフ型でもスムーズに使いこなせるように
登録を終え、Fastaskのトップページからログインすると、「リサーチ会員ページ」に移動して、アンケートの作成・配信、アンケート回収状況の確認、過去に取得したスクリーニング結果を基にした回答者リストの作成といった機能を利用できる。
インターフェースもわかりやすく、特に迷うことなく操作できるが、このページからマニュアルの「アンケート作成・操作ガイド」もダウンロードできる。このマニュアルがセルフ型サービスに対する懸念を払拭するよう、よく作り込まれている。
例えば、操作説明に入る前にはアンケート初心者向けにリサーチ関連の専門用語を解説。初めて自分でアンケート回収の進捗を追う ことになる多くのユーザーに向けては、回答が集まるピークがいつごろか、本調査のみの回収率とスクリーニング調査後に行う本調査の回収率の違いなど、実際にアンケート回収状況を追っていく時に役立つ情報を教えてくれる。
質問文テンプレートなどを利用することで、意外と簡単にできる質問文作成
システム上でアンケートを作成する作業に入る前に、質問項目を固めておこう。スクリーニング調査を実施する場合は、スクリーニング条件をあらかじめ決めておく必要がある。
「この点について調べたい」と思っても、これまで質問文を作成するところまでネットリサーチ会社に任せていたのなら、どう質問文を作成すればいいのかと悩む人もいるかもしれない。
そんな時には、トップページから「調査票設計のコツ」のページを開いてみよう。調査票の適切なボリューム、質問文・選択肢の書き方や質問文のテンプレートなどを紹介してくれている。
個人情報を取得するなどの禁止事項、ありがちな質問文の間違いなども記してあるので、既に質問文を作成していた場合でも、一度確認してみると良いだろう。というわけで、「調査票設計のコツ」を参考にして作成してみた質問文は次の通り。
- Q1.あなたはソーシャルメディアの利用経験がありますか?
- Q2. ソーシャルメディアを利用する際、使用したことのある機器をすべてお選びください。 (PCか、携帯か、スマホか等)
- Q3. Q2で選択された機器の中で最も使用頻度の高い機器を1つお選びください。
- Q4. 以下のソーシャルメディアの中であなたが利用したことのあるものをすべてお選びください。(Facebook、Twitter、mixi等)
- Q5.Q4で選択されたソーシャルメディアの現在の利用状況を教えてください。
調査の目的や、仮説がしっかり立てられていれば、ネットリサーチ会社に頼らなくても、テンプレートなどを利用することで質問文や選択肢も簡単に作成できることがわかった。
設問タイプは全8種類。自由度高く設問設定できる
質問文ができたところで、リサーチ会員ページから「アンケートの作成・配信」ページに進んでみる。過去にアンケートを作成したことがあれば、表示される画面は次のようになる 。
これまでに同じような項目で実施したアンケートがあるのなら、そのデータを複製して入力の手間を省くこともできる。これがクラウド化の利点であり、同じ質問を定期的に行っている場合は、大変便利だ。Fastaskでは、調査票、配信リスト、回答者リスト、スクリーニング調査結果や本調査結果まで、すべてをクラウド上で管理できるため、いつでも利用可能なのだ。
調査票の作成に移り、まずはQ1の入力。ソーシャルメディアの利用経験を聞いておく。設問文などを入力していくが、文章を太字・斜線・色付け・サイズ変更などで目立たせることが可能。回答前に外部サイトを参照させる際にも、テキストリンクで飛ばすことができる。設問タイプは全8種類。アンケートでよく見かける[シングル][マルチ]に自由回答の[フリー]のほか、マトリクス状の質問も作成できる。
Q5.をマトリクスシングルで作成してみると次のように なる。このようにかなり高い自由度で質問項目を作成していける。
セルフ型ではあるが、より正確な結果を得るために選択肢の表示をランダムにするかどうか、説明用の画像/動画を挿入するかどうか、といったネットリサーチで見かけるさまざまな設定にも対応している。加えて、回答内容や入力値によって特定の設問を表示する分岐の設定や、前の設問で選択された選択肢だけを引き継ぐ、絞り込み表示(パイピング機能)も可能となっており、本格的なネットリサーチの機能を備えている。
終了条件/条件分岐も調査票作成画面から簡単に設定可能
今回のアンケートの場合、ソーシャルメディアの利用経験がある女性を対象に回答を集めたいため、Q1.で利用経験なしを選択した人に対しては、アンケートを終了させるように条件設定することができる。このような流れで、質問文の入力まで完了したら、続いては配信設定を行うことになる(配信設定については後編で詳しく解説)。
設問に不安があっても、配信前にはリサーチャーによるロジックチェックが入って安心
配信設定をしても、そのまま配信がはじまるわけではない。実は、これまでのネットリサーチ同様Fastaskではロジックチェックのサービスが提供されているのだ。Fastaskは基本的に人手を介さないセルフ型のアンケートサービスだが、実は配信前の段階でジャストシステムのリサーチャーによるアンケート内容のロジックチェックが入り、おかしいところがあれば差し戻してくれる。
例えばQ4「ソーシャルメディアの中であなたが利用したことのあるものをすべてお選びください。」の中で、「8.この中にはない」と他の選択肢を同時に選択すると矛盾が生じてしまう。これを防ぐために、「8」の選択肢を他の選択肢と同時に選択できないようにする(排他制御)必要があることを今回は指摘された。
セルフ故に「おかしな設問だったらどうしよう」と不安に感じる人もいるかもしれないが、配信前の段階でこのように専門家がチェックを入れてくれるため、セルフ故の不安も軽減されることだろう。時には、より効果的なリサーチとなるようアドバイスをしてくれるときもあるようだ。
自分のペースで調査を実施できるのが最大の魅力
実際に使ってみることで、最初に抱いていた「セルフ」のイメージが覆された。設問タイプの豊富さや、条件分岐などの細かな設定は従来のネットリサーチと遜色ない。また、詳しいマニュアルの整備やロジックチェックを行ってくれる点を考えると、セルフ式が初めての方でも問題なく利用できそうだ。
また想定以上に良かったのは、自分が実施したいタイミングですぐに行える点だ。従来のネットリサーチだったら、営業担当者とのやり取りで何日も掛かっていたことがその日のうちに済んでしまう点は、大きなメリットとして挙げておくべきだろう。
後編では実際に配信を行い、回収、データの集計までを詳しく紹介する。