まずは状況整理のために、美咲がヒアリングを始めた。
「丸山室長、勅使河原部長、私たちにお任せください。できる限りの支援をさせていただきます。急ぎ、質問が3つあります。早速ひとつ目ですが、丸山室長、問題を起こしてしまった社員の方は、今回の一件が事実であることを認めていますか? そして、彼はいまどこで何をしていますか」
「淀川健太という今年入社したばかりの新卒社員で、営業部に所属しています。彼は今朝通常通り出社し、自ら上長に報告しています。残念ですが、飲酒運転をしたこと、そして、その後問題となったツイートをしたことは事実でした。週末はほとんど眠れなかったらしく、憔悴しきっています。上長とも相談をし、いまは通常業務をさせず、社内で待機させています」
「そうですか……。残念ながら事実なのですね。わかりました。いまご本人はきっとものすごく不安な状態だと思います。やってしまったことは悪いことですが、ぜひ誰かがそばにいて、やさしい言葉をかけるなどの配慮をしてあげてください。おそらく本人は十分過ぎるくらい反省していると思いますから……」
「わかりました。遠藤さんのおっしゃるとおりにいたします」
「ふたつ目の質問です。いま現在、お客様からのお問い合わせやお叱りが入っているチャネルと対応部署を教えてください。ソーシャルメディア、電話、メールの3つ以外にありますか?」
「私が把握している限りでは、おっしゃるように、ソーシャルメディア、電話、メールの3つが主要チャネルのようです。ソーシャルメディアは、勅使河原部長の広告宣伝部、電話とメール対応はお客様相談室が担っています。ただし、返信内容に困る一部のメールは、広報室で対応することになると思います。いずれにせよ、週が明けたばかりのことなので、ソーシャルメディアやメールにはまだ一切返答ができておりませんが……。電話対応は、今朝方、お客様相談室の室長と話して、私が先ほどニュースサイトの記者に回答したものと同様の定型的なコメントで返答するよう、共有しております」
「承知しました。『炎上の最前線』となるお客様相談室とはすでに意思疎通を図っていらっしゃるのですね。適切なご判断だと思います。メールへの対応も大切ですが、まずはソーシャルメディアでの対応をしておいた方が良いですね。取り急ぎ、ツイッターとフェイスブックページに、①お騒がせしていることに対するお詫び、②現在事実関係を調査中であること、③事実の解明と今後の方針が固まったらすぐに報告することの3点を投稿しておきましょう。
炎上時に、こちらが何のアクションもしないと、ユーザーに『無視をしている』と捉えられ、さらに批判が拡大してしまう可能性があります。まずはこちら側がツイッターやフェイスブックの投稿を見ていること、そして、しっかり対応していることを『早い段階で』伝えておくことが大切です。
あと、勅使河原部長。緊急時ですから、いったんツイッターとフェイスブックページの運用主体を広報室に移管しましょう。リプライやメンション内容の調査などについては、アドレボの方でも支援します」
丸山と勅使河原は無言で深く頷き、同意した。
