文脈(コンテクスト)を定める
F社の失敗例にみるように、コンテンツはただ掲載すればよいというわけではない。伝えたい文脈(コンテクスト)を意識しながら、コピーを考えたり、コンテンツを作成したり、営業を遂行しなければならない。
そこで、コンテクストを伝えるための10個の切り口をご紹介しよう。【図1】売るための力というのは大別して、「商品力」と「営業力」に分けて考えることができる。

「商品力」とは、もともとその商品やサービスが持っている力のことだ。商品を持っている力をしっかりとWebサイトを通じて伝えることは、BtoBのWebマーケティングにおいて重要だ。
「スペック・機能性」「品質・安定性」「価格・経済性」「専門性・先駆性」「サポート・継続性」などの切り口から、自社の状況と他社の状況を見比べ、他社に勝っているポイントをピックアップするとよい。
しかし、商品力だけを打ち出していても魅力的なWebサイトにはならない。商品を超える魅力を伝えるために、「営業力」のあるメッセージが必要となる。
商品の良さだけでなく、その商品をどんな形で提供し、どんな課題を解決した実績があり、それがどんな人やノウハウやデータやノウハウに裏付けられているのかを伝える必要があるのだ。そのためにコンテンツを「事例」「実績」「人物」「データ」「ノウハウ」の5つの観点から見直すとよい。
「商品力」だけでWebサイトを構成してはいけない。「商品力」そのままの売り方しかできないのであればマーケティングとはいえないのだ。商品の力を超える魅力を表現できてはじめて、他社を追従したり、新しい市場を開拓したり、落ち目の商品を復活させることができる。
コンテクストを定める
簡単なコンテクストの定め方は商品力から1つ、営業力から1つを組み合わせる方法だ。例えば、次のような例が挙げられる。
- 要件の厳しい金融企業から10社以上から高い評価(品質×事例)
- コストダウンで成功した会社が50社以上(経済性×実績)
- 機能面の満足度98%(スペック×データ)
- 業界No.1のコンサルティング集団がサポート(サポート×人物)
「営業力Aの裏づけによって商品力Bが実証されている」という文脈になると、骨太なコンテクストになりやすい。
F社の話に戻ろう。
その後、F社では中堅企業の事例も新たに作成し、企業規模ごとに満遍なく事例を掲載した。大企業には大企業向けの強みである研修コンサルティングを前面に、中堅企業にはコンパクトにチョイスできるカフェテリア型の研修を打ち出した。事例に合わせて、解決する課題や訴求するサービスもしっかり変えていった。
すると、サイトの問合せは回復し、大企業からの問合せは多いまま維持することができた。営業担当も事例掲載の許可取りに参画していたこともあり、Webサイトからどんな事例をみて問合せに至っているのかをよく理解していた。そのため、対面営業でも同じ文脈で初回訪問を行ったり、提案書の見直しを行うなどの協力も得られ、受注率も維持することができた。
事例ひとつとってみても、ただ有力なコンテンツを掲載すればよいというわけではないことが感じていただけるだろう。顧客が経験するであろう営業プロセスの流れに沿って、ひとつながりの文脈が伝わるかを常に意識しなければならないのだ。あなたが担当するWebサイトでそれができているだろうか?今一度、見直すきっかけとしていただきたい。