米国におけるデータ活用はまだ未熟な状態です
IAB(Interactive Advertising Bureau)は、1996年に設立された米国のオンライン広告の業界団体。500社以上のメディア、テクノロジー企業から成り、それらの企業のオンライン広告販売は全体の86%を占める。今回のサミットで、複数のデータソースをつかったオーディエンスセグメンテーションについてのセッションを行った、IABのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼COOを務めるパトリック・ドーラン氏に、米国におけるマーケティングの現状について聞いた。
――IABは今年の1月、データ活用が進んでいる企業とそうでない企業の間に「データ・ディバイド(データ活用における格差)」が生じているという調査レポートを発表しました。まず、この調査についてうかがいたいのですが。
この調査は、我々がWinterberry Groupという調査会社と行ったものです。彼らはいま、データを活用したマーケティングの成功事例について模索しています。データが生み出すビジネスチャンスについて多くの議論がなされていますが、多くの企業はまだ未熟というんでしょうか、そこから刺激を受けることはあっても、実際に活用している企業は少ない状況です。
それはなぜかというと、企業の中にはたくさんの「サイロ」があって、データが別々になっている。データ戦略というものがうまく機能していないんです。そのためにビジネスチャンスを失っていることがあると思います。
――こうした問題について、企業はどのように取り組んでいけばよいのでしょう。
その前に私のバックグラウンドを少し説明しましょう。1990年代後半、私はDoubleClickで働いていました。オンラインにおけるターゲティングの開発に着手し、さまざまなサービスを開発し、10年以上推進してきたのですが、結局おなじテクニックしか使われませんでした。
今回のサミットで、私と同じセッションに参加したプレゼンターはリターゲティングについて話をしたのですが、それはおそらく12年ぐらい前からあるテクノロジーです。ただ、それすら使っていない会社がほとんどなのです。
市場はどんどん成長し、オンラインに進出している企業はますます増えていますが、テクノロジー自体が標準的なビジネスのオペレーションの中に入っていくには、まだ時間がかかるでしょう。しかし、今回のサミットを見ればわかるとおり、みんなテクノロジーに興味を持っているし、それを進歩させたいという気持ちも持っています。
――サミットを主催したアドビ システムズは、業界の中でもリーダー的な存在です。今回のサミットに参加して、どのような感想を持ちましたか?
まず、こんなに多くの人がデジタルマーケティングに興味を持っているということはとてもよいことだと思います。私は15年間この業界に身を置いていますが、その間、業界そのものが著しく成長しました。最初の10年間は、大きなメディア企業が登場し、広告を打つのにメディアサイトを使っていただけだったと思います。
しかし、現在はより多くの人がオンライン広告の本当の価値を理解しています。人々はiPadやスマートフォンを持つようになり、マーケターはそこに広告し、ブランドストーリーを訴求する必要があります。
アドビは従来のマーケティングではなく、ウェブなどのテクノロジーを牽引してきた会社です。アドビの参入は、人々がこの先もっとこの分野に真剣に取り組むきざしと言えます。データマーケティングビジネスはトレンドとなっています。IBMもしかりですが、ほかにも大きなデータテクノロジー企業がこの分野に参入してくると思います。それは、彼らがデジタルマーケティングを成長分野だと見ているからなのです。