粗探しの道具? ソーシャルリクルーティングは個人にとって「敵」なのか
ソーシャルメディアが求職・採用活動に活用されるようになり、企業向けの新しいサービスが誕生しています。例えば、「ソーシャルタレントマネジメント」があります。これは、候補者や従業員のソーシャル上で流通する情報を収集、解析、管理するサービスです。さらには、従業員の個人的なネットワークを、企業が自社採用に活用するサービスまで出始めています。
従業員にとって、こうしたサービスは必ずしも歓迎できるものではないでしょう。ソーシャルリクルーティングの主語は、あくまで「採用する側の企業」です。企業にとってメリットのあるサービスばかり出てくるのは、ある程度仕方がないことなのかもしれません。
こうした状況を受けて、どのようにソーシャルメディアを活用していけばいいでしょうか。答えをひとことで言えば、「受け手を意識した情報発信を行うこと」です。
国内企業は男女雇用機会均等法などの法令により、面接時において宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合・学生運動など社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書などに関することで人を判断しないように定められています。
しかしながら、ソーシャルメディアを見ることで、採用企業はこうした情報を事前に取得することができます。そこで持った「印象」が採用の際に影響しないとは限りません。
とくに求職者は、こうした現状を冷静に受け止め、自分が発信する情報を採用担当者はどう解釈するか、意識した上で発言するべきだと言えるでしょう。
ソーシャル時代のキャリア形成 もっとも重要なのは「リファーラル」
上で述べたのは、やや受け身のキャリア戦略でした。では、積極的なキャリア戦略とはどのようなものでしょう。結論から言うと、「Referral(リファーラル)を多く勝ち取れる人になる」ことが、最も大切なことであると考えます。
Referral(リファーラル)とは「信頼できる人からの紹介・推薦」です。ソーシャルメディアにより、情報はますますオープン化していきます。場所にごとに顔を変えること、ホンネを隠すことが難しくなります。
ありのままのその人について、大量の情報があふれる時代。本当に信頼できるのは、自分が信頼している人からの情報ではないでしょうか。これをリクルーティングに置き換えると、人づての縁故での転職・採用がより一層増えていくと予測できます。アメリカではすでに、「プロフェッショナルや個人的つながりからのリファーラル(紹介)」が最も効果が高いという実績データも出ています。

さて、もしあなたが転職することになったら、どれだけリファーラルしてくれる人がいるでしょうか。最終選考時に、「前職にあなたのリファレンス(働きぶりを確認)を入れるのがルールなので、上司の連絡先を教えてください」と言われたら、自信をもって上司を紹介できるでしょうか。
信頼される人間になることが次の仕事につながる時代が、すぐそこに来ています。
まとめ
4回に渡り、ソーシャルを活用した求職や採用手法に関して解説してきました。ソーシャルリクルーティングはまだまだ発展途上中の新しい市場です。人材ビジネスのチャンスにあふれているのはもちろん、働く人と企業の間に、今なでなかった関係を生み出しています。
これから一層、日々の生活がソーシャルシフトしていくでしょう。「ソーシャルというもの」を理解し、より良い人生を送るために重要な「働く」ことを、より実りあるものにしていきましょう。
ご愛読ありがとうございました。