マーケティングROIで50%の差をつける「IMM」とは
2014年までに、IMMに基づくマーケティング戦略を保有する企業は、それを持たない企業に比べ、50%以上マーケティングROIに差をつけるであろう――。調査会社のGartnerは2010年の調査レポートで、このように予測している。
IMMとは、「統合マーケティング・マネジメント/Integrated Marketing Management」の略称。IMMとはどのような考え方で、IMMに取り組む企業の事例としてはどのようなものが出始めているのだろうか。SAS Forum Japan 2012で行われた同社ビジネス開発本部 CIグループ部長 高橋昌樹氏のセッションを通じ、IMMについて学んでいこう。
マーケティングを取り巻く環境の変化
高橋氏はまず、マーケティングが置かれている環境を、「顧客」「テクノロジー」「説明責任」という3つの視点から整理した。この中で最も注目すべきなのは顧客の変化だ。ネット、そしてソーシャルの普及により、顧客の影響力、発言力が増し、企業側から消費者へのパワーシフトが進行しているという。顧客に不快な体験をさせてしまった場合、あっという間に悪い評判が口コミで伝播するのだ。
また、テクノロジーの変化も著しい。インフラとしてソーシャルメディアが定着し、スマートフォンの普及が進む中で、大量のデータがかつてないスピードで日々生成されている状況だ。従来の構造化データに加え、ブログやクチコミといったテキストデータ(非構造化データ)を活用した顧客行動分析も可能となっている。
さらにマーケティング部門に投資対効果(ROI)への説明責任が求められるようになる一方で、単に顧客とのリレーションを構築するだけでなく、ロイヤリティを感じてもらえるような関係を築かなければならないようになったと指摘している。
「『ブランドマネジメント』や『効果的なキャンペーン』など従来から求められている内容に加え、『顧客理解』『顧客ロイヤリティの向上』といった内容も求められるようになっています」(高橋氏、以下同)
ソーシャル時代に外せない「ロイヤリティ」というキーワード
ここで注目したいのが「ロイヤリティ」というキーワードだ。顧客がお互いに情報交換できる環境を手にしているソーシャル時代においては、顧客同士が常につながっている状況にあるという。
「このような時代においては、従来のように購入してもらえばよいという考え方で終わるのではなく、もう一段上の関係を顧客と築く、つまり自社の商品を話題にし、薦めてくれるロイヤリティの高い顧客をいかに増やしていくのか、という考え方が求められています」と高橋氏は述べる。
そのためには、顧客とのやり取りや利用履歴、顧客の声などをデータとして蓄積・分析し、顧客の嗜好に応じた商品提案活動や、あらゆる顧客接点での継続的な品質改善に役立てていくことが重要だ。見込み客へのアプローチから始まり、顧客・リピーター化するだけでなく、支持者・擁護者として企業活動や商品・サービスのファンになってもらう活動がこれからのマーケティングには不可欠なのだ。
ロイヤリティの醸成のために今後のマーケティングに求められる姿として、高橋氏は次の点を挙げた。
- マーケティングに関連するプロセス、テクノロジーを統合し、ファンクションの分断を解消し、One Messageによってブランドを強化
- 伝統的なマーケティングとデジタルマーケティングを駆使し、高いブランドロイヤルティを実現
- 顧客の包括的な理解を一層進め、セグメンテーション、ターゲティングを磨き、優れた顧客体験を提供
- 顧客の声を傾聴し、商品やサービスの企画、提供に反映する仕組みを構築
- パフォーマンスの可視化・分析を進め、アカウンタビリティの明確化、ROIの継続的改善を実現
「こういったことを推進していくためには、人手では限界があり、何らかのテクノロジーが必要になります。それがIMMというコンセプトでありシステムなのです」と高橋氏は述べ、続いてIMMのプロセスと推進するのに必要なテクノロジーについて詳しく語った。