位置情報の精度の段階ごと、ユーザー体験をデザインする
位置情報サービスを活用したO2Oには、コンテンツの内容だけでなく、「ユーザー体験と技術との関係を考えることが肝要」だと柴田氏は指摘する。言い換えれば、マーケティングの目標に基づいて、どのくらい位置を絞り込むか(位置情報の精度)を左右する技術と、それによるユーザー体験のデザインを両面から考えていくわけだ。
柴田氏によると、リアル店舗が位置情報サービスを利用することを想定した場合、情報の精度は大まかに「エリア」「近隣」「入店(店内)」「レジなどの特定箇所」の4段階に分けられる。
「エリア」が表すのは「東京駅付近」などの比較的広い範囲。これは、フィーチャーフォンにも搭載されている標準的なGPS機能でカバーできる。
「近隣」はもう少し狭い、半径100m程度の範囲。WiFiを使い、「東京駅付近の◯◯交差点」などの細かい位置を特定できるが、その地点にある建物の何階にいるのかまでは判別できない。
「入店(店内)」は、文字通り店舗への入店を関知し、店内にいることを把握できる程度の精度を指す。
さらに「レジなどの特定箇所」は、「◯番レジ」「◯◯売り場」などの特定スポットまで絞り込むレベル。QRコードの読み取りや電子マネーでの決済など、あらかじめ設置したリーダーにスマートフォン自体を接触させることで来訪を確認し、それを位置情報として扱うわけだ。

入店関知により、顧客へのプッシュ型サービスの効果アップ
では、それぞれの段階で、リアル店舗への集客や購買のためにどのようなサービスが考えられるだろうか。
「エリア」や「近隣」レベルでは、アプリの起動に伴い、近隣店舗のチラシや試食クーポンなどを表示するといったサービスが可能だ。ただし、毎朝通勤するビジネスマンがアプリを立ち上げたままにしているといつも一方的に宣伝されてしまうようでは、ユーザー理解を得られない。プル型のサービスには適しているが、プッシュ型のサービスはもっと絞り込んだ範囲でないと難しい。
その点、入店を関知する技術と、それに伴うユーザー体験に大きな可能性がある。
「ビルの何階の、どの店舗を訪れたかまで特定できれば、入店したタイミングで何らかの働きかけをすることができる。店に足を踏み入れた時点で多少の興味があることは分かっているので、クーポンの配信やキャンペーンの告知、サイトへの誘導など、プッシュ型のサービスと相性がいいと言えるだろう。来店の履歴を残すことができれば、来店の回数に応じたスタンプラリーのような企画も行える」
