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LABO

難しい本が敬遠される時代、電子書籍とオンデマンド印刷に専門書の活路を見出す、インプレスR&Dの取り組み


組版はWordで

MZ:この本の紙面は、何を使って組んでいるんですか?

錦戸:Wordでテンプレートをつくって、EPUBとWordとInDesignを変換するようなシステムを福浦のところでつくっていたので、それを使ってつくりました。だからDTP会社に発注したのは、画像作成の部分だけなんです。ただし、クリエイティブは一般流通書籍と同じアートディレクターにお願いして見てもらっているので、フォントを変えればWordでもこういうふうにキレイになるというのを教わって、「ああ、これでいいのかな」と思って。

PCの画面いっぱいにウィンドウを表示した電子書籍版(EPUB)の画面
POD版と異なり、本文の横に傍注を入れるスペースがない
画面いっぱいにウィンドウを表示した場合のEPUB。ウィンドウをせばめた場合、そのサイズに合わせてテキストがリフローされる

MZ:普通の書籍編集者だと、「Wordで組む」と聞いた瞬間に固まりそうですね。

錦戸:編集者って、やり方に固執してしまうんですよね。ここ3年はWordを使った組版を少しずつやっていたので、こういうやり方でもいいんだというふうにすんなり入れました。

MZ:この本をつくる過程で、福浦さんの役割はどのようなものだったのでしょうか。

錦戸:福浦は電子出版システム研究所という部署なので、技術的なことはすべてここで開発しているんですね。なので、制作工程は基本的には福浦に相談して全部つくりました。編集者的にはそこが一番画期的でしたね。

インプレスR&D 電子出版システム研究所 OnDeck副編集長 福浦一広氏
インプレスR&D 電子出版システム研究所 OnDeck副編集長 
福浦一広氏 (撮影:錦戸氏)

MZ:かつてのアスキーなどIT系の出版社では、自社でTeXのカスタマイズしたシステムを持っていました。そういう歴史がある出版社と、外部のDTP会社に発注するだけの出版社では、技術に対する蓄積がまったく違うと思うんですが。

福浦:自社でシステムをつくってはいますが、まだ答えは出ていないんです。結局今までのアスキーさんもそうですけど、自社で組版システムをつくって社内でしか使っていないじゃないですか。それってほんとにいいのかというのはグループ内で議論はあるんです。

 ただ、出版社なのでシステムを外販できない。錦戸みたいなニーズがあると、社内的にはすぐに対応できるんですが、外部から求められたときにどこまでできるのかというのは今後の課題としてあるのかなと思います。

制作に「2人日以上かけるな!」

MZ:では、今回のブランドをつくるにあたっては、福浦さんが全面的に錦戸さんをバックアップして……。

福浦:どっちかというといじめてました。「2人日以上かけるな!」と(笑)。

MZ:「2人月」ではなく「2人日」ですか?

錦戸:著者と企画会議したり、目次立てしたりというプランニングやディレクションは普通にやっているんですが、組版などの制作工程については、ゴールデンウィークの休みの日に作業をやりました。

 この本は自分でレイアウトしたのに近いんです。EPUBのタグにすぐ変換できるようなテンプレートをWord上でつくって、それにどんどんあてはめていって。これまでは編集者は自分で組まずに、DTPオペレータが組んでいましたが、今回は私がタグを付けるという作業としてはじめてやったかたちです。

MZ:実際にやってみていかがでしたか?

錦戸:めちゃくちゃ楽だと思いました。ふだんの編集作業のときもエディタ上で、ここが見出しで、書体替えしてとか、このパラグラフのあとに図版入れる……みたいなことを頭の中で考えながら編集しているので、それを単純に出来上がりどおりに展開するだけでした。

 本をつくるプロセスでもっとも重要だと思っていたDTPにお金を払わなくていいんだというのが、自分の中ではびっくりしたという感じです。もう二度とDTPには出さないと思いました。

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電子化で試される、紙面の価値

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2012/08/02 10:16 https://markezine.jp/article/detail/16067

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