ネットストアの成功の秘訣は顧客時間の活性化
「無印良品ネットストアの売上は2006年を転機に、世界最大店舗の有楽町をこえているんですよ。ネットとリアルの融合を進めています」
ネットストア事業で成功を納めている無印良品。奥谷氏が部長を務めるWEB事業のミッションは既存顧客の時間を把握することだという。「顧客時間の活性化がネットストアの成功に結びつく」と語るが、「顧客時間」とはいったい何なのだろうか。
顧客が商品を購入する際、「検討」→「購入」→「使用&消費」というプロセスをたどる。その一連のプロセスの前後を含めた流れが顧客時間であると奥谷氏は語る。
「ネットストアには顧客別購入データが存在しますが、『購入』を数字で分析するだけの時代は終わりました。今はソーシャルメディアによって、『検討』前と『使用&消費』後の顧客行動を分析し、一連の顧客時間を可視化することができます」
ネットとリアルを融合する施策の一つに「店舗受け取りサービス」がある。これはネットで注文して、リアル店舗で受け取りと購入を行うというしくみ。2011年7月にスタートし、順調に利用者は増えている。
このサービスの利用者は、都心よりも地方が多いそう。在庫点数の少ない地方のお店は、顧客の注文に応じてネットを介して在庫を融通し、店舗に無駄なく商品を取り寄せる。余分な在庫を抱えるリスクを持たずに、店舗にはない商品を顧客に売る新たな購入機会を創出することができる。
ソーシャルメディアで「ゆるい」顧客の声を聴く
無印良品のソーシャルメディア運営では、あえて一人称を出さずに、顧客の声を傾聴することに重きを置いている。
「ソーシャルメディアは私たちにとってはやりやすいですね。ここ10年、ずっとネットで顧客と関係は築いてきたので、比較的容易にSNSでコミュニケーションしています。課題はソーシャルメディアから、自社メディアにどう戻ってきてもらうかですね」
現在、顧客も企業も、ソーシャルメディアの管理が複雑多岐になっている。そんな状況でSocial Media ROIを売り上げで考えると採算が合わないので、顧客情報をもらうことを無印良品ではゴールにしている。
「例えば口コミを分析すると、口コミの男女比率に加えて内容や取り上げる商品の違いなどが明らかになります。POSレジではわからない情報まで拾える。このように口コミを分析して得た結果を次のマーケティング戦略に活かします。情報の流れは、『BtoC』から『CtoC』『CtoB』に変わってきています」