「スペースデブリーズ」世界観を保ちつつユーザー動向を加味して企画
次に「スペースデブリーズ」。

こちらは「農園ホッコリーナ」と少し趣が異なり、かわいいけれどシュールでやや毒気もある、アメコミのような雰囲気が人気だ。企画は女性、デザイナーは男性が担っている。ユーザーは8割が女性だが、シュールな雰囲気を好む嗜好性を踏まえて、同じく8つ目の「ユーザーを見る」を常に念頭に置き、反応を都度確認しながら運営しているという。
企画を検討するのは4名だが、「理詰めではなく、各々が感じていることを出し合うと意外と意見が合致する」と担当者は話す。世界観は保ちつつも、企画側の決め付けや押し付けにならずに、掲示板の書き込みなどからユーザーが感じていることを受け止めて次の一手を考えていくことが重要だと言えるだろう。担当者が個人的にはさほどゲームをやり込むタイプではないことも、プラスに働いているのかもしれない。
本ゲームもライトユーザーが増えているので、「ハードルを下げてゲームに馴染みのない人も楽しめるように」と工夫していく意向だ。
「セトルリン」直接的なアピールと間接的なアピールのバランスが重要
「セトルリン」は、育成ゲームでありながら放っておいても育つ、前述の2タイトルよりもさらに“ゆるい”ゲームだ。言い換えれば、目標を達成しようといったモチベーションがさらに低く、代わりに癒しの要素が強く求められている。

女性担当者がポイントとして挙げたのは、1つ目の「利用シーン重視」と、6つ目の「あざとさの使い方」だ。目的意識が薄い分だけ、継続的に使ってもらうのに有効な手立てを読むのが難しい。例えば放っておいても育つものの、ログインすれば「さびしかった」と言う。しかし、あまりしつこく言わせても逆効果になる。「自分で自分の尻尾を追いかけているなど、『しょうがないヤツだな』と感じさせる動きやセリフも盛り込んでいる」と担当者。
現場では、ユーザーの意見や反応から、ほっとするコミュニケーションが求められていると実感しているようだ。他ユーザーとの関わりが濃いゲームではないので、今後はリアルな場で、女性同士が「わかる!」と話せるような共感の意識をどうゲーム内に盛り込んでいくかが課題だという。
既存のセオリーでなく、女性ユーザーの反応から切り出した「法則」
その他、現場の意見で共通するのは、イベント等で「どの程度普段と違うことをするか」のバランスがカギだということだ。5つ目のポイントとして挙げた「基本サイクルの延長」にも通じるが、既存ユーザーが違和感を感じず、必要十分にいつも楽しめるように、反応を見ながらユーザーインターフェースの改善やイベントなどの仕掛けの工夫をしていくことが求められると考えている。特に、新規ユーザーが増えてきている、あるいは増やしたいと思っている状況では、チュートリアルひとつとってもマイナーチェンジを重ねることが必要だろう。
また、女子ゲーは男性ユーザー中心のゲームと違って、昼休みなどに誰かがプレイしているのを見てクチコミで広がっていくケースが多い。芸能人や化粧品などの話で盛り上がるのと同じトーンで、ソーシャルゲーム上の何かを見てほしい、話したいと思わせるような共感性を付加するのがポイントになるだろう。
女性向けゲームのポイントについて、かなり広範囲に解説したが、ひとことでいうと、女性の感性を理屈ではなくそのまま受け止めたうえで戦略を検討することがカギになるのではないだろうか。
実際に、9つのポイントはいずれも、既存のゲームのセオリーではなくあくまで女性ユーザーの反応をいくつかの切り口で抽出したものだ。ユーザーの反応を柔軟に企画に反映できるソーシャルゲームだからこそ、試行錯誤を重ねてゲーム自体を育てていく姿勢が大事だと考えている。