エアアジア独自のブランディング戦略
店舗がないだけに、利用者にとってフライトアテンダントはブランドイメージを左右する重要な存在だ。彼・彼女たちに同社では「自分らしく個性的に、自分が一番輝いて見えるように」と指導している。コンセプトは「楽しく、セクシーに」。本国へ研修に出る前は控えめだった日本人スタッフも、「研修が終わればすっかりオープンになっている」そうだ。
本部内の垣根もなく、決まった席を設けずに、他部門のスタッフとも随時コミュニケーションを取りながら業務にあたっている。社長が隣の席にいることもあるそうで、風通しのいい社風がうかがえる。ただし、こうした同社ならではのカジュアルなトーンも安全な運航があってこそ。
「安全の徹底が最重要項目であることは、既存航空会社もLCCも、電車やバスもすべて同じです。その大前提を押さえた上で、エアアジアらしいブランディングを展開し、またマーケティングセクションでも予算をにらみながらも楽しく和気藹々と企画に取り組んでいます」(佐伯さん)
課題は購入ステップの簡素化とスマートフォンサイトの改善
これまでの日本には、LCCという選択肢が広く知られていなかった。そこへ競合と共に参入し、自社ブランドを根付かせていくのは簡単なことではないが、いわゆるオンライン決済(EC)が幅広い世代に浸透しつつあるのは追い風だ。
「ITリテラシーが高くない人もスムーズに購入できる構造やインターフェースの構築は、直近の課題です。電車の切符を買うくらい簡単にしたいですね。それから、スマートフォンも今の時代には欠かせないデバイスなので、システムの改善を進めています」(佐伯さん)
佐伯さんによると、就航を機に多くのメディアで取り上げられたことで、今は新聞やテレビ番組を介してオンラインの世界だけでは接触できない層にリーチできているという。それから、息子・娘世代が50~60代以上の親に薦め、手配をしているケースも見られるそうだ。
注目を集めているうちに、より多彩な情報を提供していく一方で、「せっかくソーシャルメディア上で多くの方に関わってもらえているので、カスタマーと同じ目線でもっと楽しい施策や話題を生み出すことも探りたい」と佐伯さんは語る。エアアジア・ジャパンが繰り広げる施策は、LCC就航イヤーの勢いをさらに加速させていきそうだ。

(右)エアアジア・ジャパン株式会社 デジタル・マーケティングチーム 佐伯陽子さん