役割分担はバランス感覚を阻害する
これらのミスマッチは実際のところ起こりやすいものばかりだ。事前に分かっていてもなかなか解決は一筋縄ではいかない。
1つの要因は、企業内では役割分担がなされていることにある。サイトを管理する人、集客を企画する人、リアルイベントを推進する人、既存クライアントに責任のある人、メールマガジンを担当する人、営業活動を行う人、システムを守る人などさまざまな立場がいることだ。それぞれに主たる目的が異なり、足並みをそろえるには多くの協力が必要だ。
ところが、Webマーケティングは多岐に渡る分野の知識を要する。ある程度、全体的な設計図、未来予想図は欠かすことができないが、他の担当者の領域まで、情報を熟知し、全体を見越した動きを取ることは決して容易ではない。
自社の製品やサービスに関する知識も、Webマーケティングに対する期待値も社内で一様ではない。そんな中、全体像を見据えながら、全体としての最適化のために舵取りを行うのはなかなか難しいのだ。
では、どのように目安をつけてバランスをとっていったらよいだろうか?
BtoBのマーケティングステージ
さまざまな企業のコンサルティングやご相談を受けた経験から、マーケティングプランを着実に進めるにはさまざまな施策の足並みをそろえて昇っていくステージが必要であることがわかってきた。ひとつの施策、どこかひとつの部署が突き抜けるのではなく、バランスよく全体を押し上げながら、有機的につながっていく。そのための1つの目安をご提示したい。
縦軸には、施策のカテゴリをとる。判断基準の詳細までは文量の関係もありご紹介できないが、例えば集客では『基本的な集客策の実施』として、
- 基本的なSEO対策
- 主要キーワードでのリスティング広告(企業形態や商材により)
- 関連企業やパートナーサイトからの被リンク
- Webプレスリリース
などを主な要件にしている。KPIとして「誘導数」をチェックし、基本的な集客策の効果が上がっているかを検証する。それが充分にできた上で、『効果的な集客施策』の開拓を行う。
- 多彩なキーワードでのリスティング広告
- リマーケティングやインタレストマッチ広告
- 専門メディアへの出稿/連携
- ソーシャルメディアの活用
などを検討し、KPIとして十分な「コンバージョン数」が、各集客経路から獲得できているかを検証する。その後、ランディングページを特化させたり、リアルタイムA/Bテストを実施したりと『集客コストの最適化』を目指し、集客としてのレベルアップを計るといった具合だ。
横軸はWebマーケティング全体としての目標レベルを設定する。『製品・サービス情報の的確な提供』に始まり、『積極的なリード獲得』、『効率のよい案件獲得』のステージでリード獲得の基礎を作る。
『収穫逓増モデル』『Web営業モデルの確率』のステージでWebをミックスした営業モデルを模索し、『事業戦略への中核化』となりうるようにWebマーケティングのステージを登っていく。
各ステージで現状を調べるときには、縦軸の各施策が目標としているステージに追いついているかを検証する。追いついていない施策について優先的に補完を行っていく。
すると、前述したようなミスマッチが起こりにくい。例えば、コンバージョン率を十分に高めてから、集約を行ったほうがよい。コンテンツを生み出せる体制ができてから、メールマガジンをはじめたほうがいい。コンテンツやデータが出揃ってから分析を行ったほうがいい。適切な順番で物事が進むことで、バランスよくWebマーケティングがステップアップできるのだ。
これからWebマーケティングを始めようという企業ならば、まずはステージ3「効率のよい案件獲得」を目指すべきだろう。
BtoBのマーケティング戦略の方向性
のち、一定のWebマーケティングの成果がでると、戦略としてより多岐に渡る方向性が出てくる。単にリードを増やし、受注を増やすだけではない本格的な戦略を視野に入れることができる。

いずれの方向性においても他社が追従できないレベルの営業モデルやWebマーケティングを推進できれば経営基盤として中長期的に誇ることができる強みになるだろう。そのためにも、まずはバランス感覚をもった施策のプランニングと実行が欠かせないのだ。
最後に
Webマーケティングに関する情報を書籍やWebで触れると知見が多く、やらなければならないことが多いと考えがちだ。データもたくさん出てくるので、危機感もあおられる。どこから手をつければよいか迷うことも多いだろう。
一方で、特にBtoB分野では頼れる文献や専門家もまだまだ少ない。そんな現状に対して今回の全12回の連載を通じ、真剣にチャレンジをされている皆様へのヒントが少しでもあれば幸いである。個々の施策へのヒント、全体像を見渡すヒント、少しでもひっかかるところがあれば、Webマーケティングを根本から見直すきっかけになるかもしれない。
そして、縁があれば皆様とどこかで新しいチャレンジを共にできることを願って。