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ビッグデータ活用の現場から

毎日データをモニタリングしていても、ビジネスインパクトにつながらないワケ ─ リクルート式ビッグデータのビジネス活用最前線


「数値は見ている」の落とし穴3~数値の解釈・表現のポイント~

 数値は絶対的・客観的なイメージを抱きがちですが、実際には物理的な「値」にすぎません。そのため同じ目的に対しても、十人十色の分析設計が存在しており、この分析設計によっては解釈が異なってくることもあります。では解釈のポイントとはなんでしょうか? それは、下記3つのポイントを理解したうえで、分析設計を行うことだと考えています。

  1. 「解釈する」ために必要なこと
  2. 「解釈しやすくする」ために重要なこと
  3. 「正しく解釈する」ために必要なこと

1.「解釈する」ためには指標と評価方法が必要

 突然ですが、「今月の平均購入単価が5,000円なのは高い」という文章に、違和感を感じませんか? なぜなら「高い/低い」のような評価をする場合には、基準がないと判断ができないはずです。先月の商品単価は4,000円かもしれませんが、昨年の同月は6,000円かもしれません。

 また、1件の獲得効率を評価するCPAという指標があります。では、CPA1,000円をどう思いますか?

 こちらも500円のものを売る場合と、100,000円のものを売る場合では評価が違います。そして500円でCPA1,000円は赤字なので、やらないほうがよい、と指摘する方がいるかもしれませんね。

 しかしトライアル商品の会員獲得を目的にしており、継続購入による利益計算しているのであれば500円のものを売っても戦略上採用されるかもしれません。そもそも、500円と100,000円という金額の異なるもので、共通の指標を設定するならROIの方がいいですよね…。

 このように、目的や比較対象によって解釈は大きく異なるため、指標と基準の両方が設計できて初めて意味のある解釈ができるのです。

2.「解釈しやすくする」ためにはグラフ化が重要

 では、1種類の商品を売るために広告を出稿したとします。追加予算をどこに投資するか検討するうえで、解釈しやすいのはどちらでしょうか?

図4:グラフ化による視覚化
図4:グラフ化による視覚化

 このように、解釈を容易にするためには、視覚的に表現することが重要になります。ただし、表現方法によって与える印象は変わりますので、「何を伝えたいのか」を忘れずにグラフ化しましょう。

3.「正しく解釈する」ためには、統計学が必要

 月商5億円のECサイトの担当者だと思ってください。今月業務改善を行いました。その結果、前月に比べて売上が1,000万上がっていたとします。皆様どのように報告しますか?

 今月は業務改善が功を奏して、前月より1000万円(2%)売上が伸びています!! そのように報告するかもしれません。(私も担当者だったらそう報告するかもしれませんが…)

 しかし本当にその2%は、改善していると判断してよいのでしょうか? トレンドとして伸びているだけかもしれませんし、偶然発生によるものかもしれませんね。

 実は、以前私もそのまま報告してしまい、上司に指摘されたことがあります…。上記の例では、以下のようなアプローチが考えられます。

トレンドの除去

 まず一般的には昨年対比などで季節性除去が行われますが、時系列分析などの統計手法を使って、売上を予測します。そしてトレンドを除去し、それでも売上が伸びていれば効果とみなします。そもそもトレンドとして月500万円程度の伸びが予想されるなら、500万は業務改善の効果という解釈になりますね。

統計的検定

 2%の価値が偶然発生しうることなのかを検定により判断します。これにより、2%という値を、たまたま発生した値ではなく、今月の評価として解釈することもできる可能性があります。

 また、平均、中央値、最頻値、標準偏差…など、普段、何気なく使っている数値にも落とし穴が潜んでいます。各統計値の意味を理解していないと、数値の持つ意味を誤り、解釈を間違えているかもしれません。

 年収で例を挙げてみましょう。A社の平均年収が475万、B社の平均年収が500万円だとします。どちらの会社に魅力を感じますか?

図5:年収の分布
図5:年収の分布

 中央値でみれば、A社は500万ですが、B社は300万です。B社の平均年収が500万だからといって、500万付近の人が多いとは限りません。

 また、アンケートを取得した方なら経験があるかもしれませんが、サンプル数が何件必要か判断に困ったことはありませんか? これも統計的に算出することが可能です。

図6:アンケートのサンプル数
図6:アンケートのサンプル数

 大容量データを扱うためには、情報を集約する必要があります。しかし「正しく解釈する」ためには、目的にあった集約の仕方が必要となります。もし統計学の基本を知らずに、集約していると本質とは違った方向へ導く可能性が高くなります。

 統計学を知らず、何気なく数値を見ている人がいたら、「解釈」のミスリードを起こしていることにさえ、気付いていないかもしれませんね。

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リクルート流・データの可視化~評価に統計値を利用したモニタリング

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この記事の著者

野川 幸毅(ノガワコウキ)

株式会社リクルートテクノロジーズ
ITソリューション部ビッグデータグループ データサイエンスチーム

2006年よりトランスコスモス株式会社にて、データ活用プロジェクトに従事。モデリング・マイニング・モニタリング・リサーチなどの分析知識だけでなく、システム実装やSiteCatalystの設計といったデータ知...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

株式会社リクルートテクノロジーズ ビッグデータグループ データサイエンスチーム(カブシキカイシャリクルートテクノロジーズ ビッグデータグループ データサイエンスチーム)

ビッグデータグループ
リクルートグループの情報活用を全社的に担っている機能組織。分析者、技術者、ハイブリッド人材がなどの様々な人材が数十人規模で所属。リクルートにあるWeb、クライアント、カスタマー等の様々な情報を使ったイノベーションに日々取り組んでいる。

データサイエンスチーム...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/11/16 19:18 https://markezine.jp/article/detail/16710

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