本当に優秀なクリエイターには、事業開発案件のオーダーが来ている
田島:プレイヤーは変わってきていますよね。にもかかわらず、大手広告代理店さんはフォーマット化したがる傾向があると感じています。勝ちパターンを見つけると、それにこだわりがちというか。代理店内の個人を指名したり、ブティック指名ができたら一番いいかもしれない。フレキシブルに。
横山:企業のマーケティング・コミュニケーションの1つの目的を達成するために、コンテンツを作るというのがあると思います。たとえば、R/GAというデジタルエージェンシーが手がけた「NikeFuel」。これはもはや、1つのサービス、事業開発のレベルですよね。そういう発想ができる人たちを巻き込む段階に入っているんだろうなと。大手広告代理店は、コミュニケーションの一部は上手に作れるけれど、難しい分野もあるということです。
ワンストップでなんでもやることが、いちばん価値がある時代があったんですよ。それは、広告代理店と広告主を比較したとき、広告主のほうが知見がないときに成立したモデルです。これからは、ワンストップを求めすぎずに、直接、代理店の先にいるテクノロジーに強い人たちやサービス開発に強い人たちと、直接コンタクトしていく。彼らもそれを求めていますから。

田島:事業主側がプロデューサーにならざるをえないかなとは思っています。先ほど事業開発とおっしゃいましたが、ブランド戦略は事業戦略の1つだとSUUMOでは考えています。事業の目標を達成するためにブランド戦略があって、開発プロセスもブランド戦略と関係している。それがわかるのは、やはり事業主側です。
「NikeFuel」の事例のように、深く広告主の事業戦略にコミットしていただけるなら、一緒にアイディアを出し合い、昇華する建設的な関係になると思います。でも、広告クリエイティブという表面的なやりとりに終わってしまうと、事業目標達成には結び付きにくい。目標達成できない広告主も、その非を責められる代理店もお互いが不幸です。ただ、どこまで真剣になっていただけるかは、こちらの要求度合いにもよると思います。
横山:代理店の中でも、本当に優秀なクリエイターのところには事業開発案件が来ますよね。単純にクリエイティブの話ではなくて、クリエイターの頭で一緒に事業開発に入ってほしいというような。
代理店のマーケティング担当がもてはやされた時期が20年以上前にあって、その頃は、消費者の目線から商品開発であり、ブランド開発をしようという時期だったんです。その頃は、代理店のほうが事業主側より、多少は消費者に対する情報を持っていた。メーカーさんは、直接消費者とコミュニケーションがとれませんでしたから。だから成立したんです。
現在は、実際のマーケティング力は企業側のマーケティング担当者のほうが持っていて、消費者目線での商品開発があまり成立しない。企業にいなければ、根本的にどういう事業がありうるかがわからないし、消費者のことはオウンドメディアでわかっちゃいますしね。
アーンドメディア、オウンドメディアについて、代理店には素人同然の人もいるんですよね。やってみないとわからないのに、ユーザーですらない人がいる。
田島:ソーシャルの肌感覚がない方は、残念ながらいらっしゃいますね。打ち合わせで、こちらとしては普通だと思って話していることが、実は正しくご理解いただけていない場合があったりとか。
横山:コミュニケーションの先端を行く企業が、ありえないですよね。FacebookやTwitterをユーザーとして使っていない人が、コミュニケーション先端企業にいちゃいけないと思います。申し訳ないですけど。(後編に続く)

[目次]
1. ビッグデータの時代
2.ターゲットの再定義
3. ビッグデータ時代のマーケティング・コミュニケーション
4. 未来の顧客を発見する
5. 反応者志向の発想でビジネスの常識が変わる
横山さんは2、4章を担当。「想定するターゲティング」から「実証するターゲティング」へ。まさに「ビッグデータ時代の新マーケティング思考」を根本的なところからきちっと定義してくださってます。⇒Amazonで購入するならこちら