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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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統括編集長インタビュー

[横山×田島対談]大手広告代理店ではトリプルメディア・キャンペーンをやりきれない? デジタル・マーケティング全盛時代のコミュニケーション開発とは


求められるのはシェアされるクリエイティブ、事業開発レベルのコンテンツ

――そういった広告代理店と広告主の温度感の違いは、どういったところから生まれてくるのでしょうか。

横山:僕も代理店に長くいたのでよくわかるのですが、昔はプロダクトコーンといって、商品のレギュレーションやスペックから企画を考えましょう。その上に消費者のベネフィットを発想して、凝縮して、さらにどういうエッセンスに加工するかというモデルでコミュニケーション開発をしていました。それはつまり、「CMは15秒しかない」という前提あってのものだったのです。

 でも、Webで「プル」を引き出して、ユーザーの文脈でどういうコミュニケーションするかとなると、まったく逆の発想になる。いろんな文脈があってそれぞれに対応して、最終的には1つの商品に集約させていきましょうというコミュニケーションです。それを従来のプロダクトコーンに当てはめると、ほとんどの人に刺さらない。

 Webの世界って脇が甘いほうがいいわけじゃないですか。ツッコミようがあるから反応があるわけで。ゲームの世界で考えてみても、ソーシャルゲームはゲームそのものの完成度が高いわけじゃなく、ユーザーとともに作っていくという発想です。PR系でも、「プレスリリース」というメディア向けのものではなく、「ニュースリリース」というユーザー向けの発信が求められている。広告クリエイティブについても、「ソーシャルクリエイティブ」とDDB等が言い出してるんですが、いかに伝播されやすいかで判断されています。カンヌ広告祭も、ここ10年くらいは伝播されやすい、ソーシャルでシェアされやすい作品が評価されるようになっています。しかし、代理店のCM職人さんにあまりに完成度の高いものを作ってもらっちゃうと、何の反応もない。するとソーシャルのような仕組みがあるのに、非常にもったいないことになってしまう。

 さらに御社の場合は、キャラクターがある。これはお金がないとなかなかできないことで(笑)。代理店には、ブランドコミュニケーションを保つためにキャラクターがあるという設定なので、そこからいろんなこと発想してほしいというオーダーだったと思うんですが。

田島:はい。本来であれば代理店さんからそういったご提案をいただけると嬉しいのですが、こちらから積極的に求めていかないと、なかなかいただけないんですよね。

横山:代理店の営業さんから、「何としても、デジタルのアイディアを入れたいのでお願いします」という依頼が、3日前に来たりします。オリエンは1ヵ月くらい前にあって、その間何をしていたかというと、スタッフィングにものすごく時間がかかっているんですね。はじめから僕のところへ持ってきてくれればいいんだけど、ネットワークがなくて誰に何を聞けばいいのかわからない。代理店の営業=アカウントプランナーの仕事とは、コミュニケーション開発のアイディアを持っている人を人脈に持っていて、アサインできるかだと思うんですが、そうはいかないようです。

田島:広告主側の方ともお話しする機会があって、代理店の企画に対する不満も耳にします。でも、広告主側からも、アイディアを出していかないといけないですよね。漠然とした依頼だと、漠然とした企画しか出てこないと思います。

横山:ディレクションしないといけないですからね。開発プロセスを広告主側も変えていかないといけないと思います。僕がコンサルした経験から、広告主側にも問題はあって、たとえば社内稟議用の資料がそのままオリエンに使われていたりしませんか? すると、一見これまでと何の変わりもないようなコミュニケーション開発に見えてしまう場合があります。

 ほかにも、事業部ごとブランドマネージャーがいて、ナレッジを共有できていないところもあるようです。こと、デジタルマーケティングが入ってきてそれがコアになってきたら、いままでと違うアイディアの求め方をどうしたらいいのか、どういうプレイヤーに声をかけたらいいのか。ネットワークを共有したほうがいい。

 アメリカでは、クライアントのニーズを元に、クリエイティブ・ブティックのコンサルがあるんですね。そういうのが日本でも必要なのかもしれない。

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本当に優秀なクリエイターには、事業開発案件のオーダーが来ている

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/12/04 11:23 https://markezine.jp/article/detail/16742

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