判断し、実行せよ! データを「見ている」だけなら、高いツールは不要
――リクルートさんはデジタル・マーケティングの先進企業ですが、データ活用にはどのように取り組まれていますか?
田島:オンラインのアトリビューションは磨き込みの段階に入っています。需要予測、つまり、これだけの効果が欲しいときにどれだけの施策を打ったらいいかがわかる仕組みは整ってきています。
これから取り組もうとしているのは、オフラインからオンラインのアトリビューションです。テレビCMがどれだけWebのアクションに効いているのか。各施策の関係性の仮説からモデル図を描き、直接効果、間接効果も含めた因果関係が統計的に妥当であるのかの検証をすることで、各施策のWebアクションへの貢献度を明確にしていきます。マス広告を1%減らしただけでもかなり大きなコストが浮くので、ソーシャルの貢献度が高いのであればソーシャルに投資配分を変えるなど、今期中にそうしたモデルに変えていきたいなと考えています。
横山:アドテック東京2012の僕のセッションは、まさにアトリビューションがテーマでした(レポート記事はこちら)。オンラインのアトリビューションはかなり突っ込んだところまで来ているのですが、オフラインと別々に走っても意味がない。とりあえず、「ゴールはオンラインにある」という従来のRFM分析で始めているのですが、オフラインならそれが、リアルな店舗への送客だったり売上だったり。説明変数が複雑なのは以前からわかっていたんですが、目的変数も複雑なんです。単純に、POSデータや売上のように1つではない。多構造化モデルを作って取り組んでいます。
大きな声じゃ言えないんですが、分析をすればするほど、説明変数「広告」の寄与率が低い。それよりも、有名人のTwitterで取り上げらて一気にとかね。これは、僕らのように広告を売らない、サードパーティでなければできないことです。
いずれにしろ、マス広告には莫大な金額を使っているので、それを5%でも改善できれば大きな効果につながるし、その分をアトリビューションの測定モデルに使ってもいいはずです。ツールもシミュレーターだけなら1,000万円もしないものが出てきているし。以前は「アメリカではできるけど、日本ではデータがとれない」なんて意見があったんですが、ビッグデータ時代でそこそこデータがとれるようになってきたのは事実なので。
田島:解析速度が非常に速くなりましたよね。数年前まではデータ解析に何時間もかかっていたのが、今はクラウドなどの環境も整い、リアルタイムでサービスを提供できる企業も出てきましたから。
横山:マス広告が効かないというのではなくて、いろいろと複雑な経路があって、単発の施策で成功することがなくなってきた。同じマーケティング・コストを使うのであっても、いろいろ組み合わせてやるようになってきています。すると、何が効いて何が効かないのかを詳らかにしないと。100年前から「半分はムダだ」と言われていますが、どちらの半分がムダかわからないからそのままやり続けるというモデルを、今後も続けるんですか?と問われているわけです。
いきなりマス広告を半分にしなくてもいいんですが、もう少し科学的にやるべきだなと思っています。ビッグデータ・マーケティングとは、「データによって判断する」こと。データもとれて、解析ツールが出てきても、「ふーん」と見ているだけじゃダメ。広告の予算配分も、会社の中の力学で決まってしまうなら、最初から高いツール入れる必要なんかないんですよ。
事前に、「この閾値を超えたら◯◯する」ということを、ちゃんとプログラムして判断できるかどうか。そのくらいのことをしないとデータドリブンとは言えない。データで経営判断をするところまでやるか、やらないか。何を判断するためにデータを取っているか。その考え方が文化として根付かないと、ビッグデータにお金を使っても意味がないでしょう。