「ネットとテレビのデータを融合させる」、その落とし穴とは?
MZ:ツイッター以外にも、ネットとテレビのデータの融合といった取り組みはなされているのでしょうか。
尾関:ロンドン五輪のときには、テレビの日記式アンケート、ネットのログを合わせて接触率を調査しました。また、従来の視聴率測定器とは別の機械を家庭に設置し、ネットの接触状況のデータをなんらかの方法で取得して、同じサンプルで「CMを3回見たあとに検索して、価格比較サイトで調べてからECサイトで購入した」といった流れを追う実験調査も行っています。
MZ:そういう調査も可能なんですね。
尾関:ただ、インターネットの世界は出現率が0.1%ということも頻繁にありますよね。そうなると数百サンプルや数千サンプルだと数が足りない。場合によっては最低でも10万とかそれ以上ないとダメという話も理論上あるわけです。
そのために我々がどういう取り組みをしているかというと、テレビもインターネットと同じで「タグ」をはることができるんですよ。インターネットにはHTMLのタグがありますが、テレビは「BML(Broadcast Markup Language)」のタグをはるんです。そうすると、テレビのリアルタイムの視聴状況が測定できる。テレビの結線率が全体で10~20%くらいという状況なので、世の中のすべての世帯からログが上がってくるわけではないんですが。
MZ:では、その結線率が上がってくると……。
尾関:データを取得できます。そのときに、テレビのデバイスIDもわかるので、それとインターネットのログデータとなんらかのユニークなIDで結びつけて同一の世帯で調査すれば、何万サンプルという単位でひとつのシングルソースがわかりますよね。
MZ:それはすごいです。結線率、はやく上がってほしいですね。

尾関:でも、そのときに大切なことがあるんです。従来のテレビの価値はリーチであって、一度に多くのひとの心を動かすことができる。つまり、個別ではなく全体に対してレスポンスが発生すると考えているので、テレビにタグをはって取得したデータと、インターネットのログとを結びつけたデータベースをつくったとしても、インターネット的な解釈、インタラクティブ的な世界だけでそれを全部説明することができる、という考え方はしないほうがいいと思うんです。
MZ:客観的な分析をしているつもりが、都合のいい結論を導きかねないということですね。インターネットやデジタルマーケティングの側からすると、非常に耳が痛いです。
尾関:何度もお話しているように、テレビが新しい時代に入ったから、テクノロジーやインターネットとの連携を考えないといけない。でも、テレビがネットとの連携を模索しているのであれば、インターネットの側も新しい時代に入ったのかもしれないよねという話なんです。