PCユーザーとスマホユーザーのニーズは異なる
── 会員組織についても幾つか質問をさせてください。1つ目はANAマイレージクラブ、メール会員の会員規模についてです。集客や会員化するための特別なプロモーション施策などは展開されていますか。
ANAマイレージクラブは2,000万人、メール会員はANAマイレージクラブの約25%です。会員化プログラムに関しては、弊社含め航空会社が先駆者的にやってきた領域だと思います。1997年から、マイルプログラムをはじめ当時より入会販促は継続してやってきておりますが、ある時期だけ特別なキャンペーンを展開するようなプロモーションは行っておりません。1997年からの日々の積み重ねが現在の会員数につながっていると思います。
── 2つ目はマイレージクラブの発足に関してです。いつからどのような目的で発足されたのでしょうか。
私たちは1997年5月よりこのプログラムをスタートさせました。弊社がこのような取り組みをスタートする前から、欧米の航空会社ではOnetoOneマーケティングの一貫として実施していました。このプログラムの導入により、個々のお客様の情報収集・分析ができるようになり、より深いサービスの提供が可能になったと感じております。
── スマホのオウンドメディア戦略についてはどのようにお考えでしょうか。
先にも申し上げましたが、スマホの影響力は日々高まっておりますので、弊社ビジネスにおいても非常に重要な領域という認識です。その理由としては大きくは3つあります。
1つ目は、デバイスとしての利用率の変化にあります。弊社の場合ですとPCサイトへアクセスするお客様の約2割が、スマートデバイスより来訪しています。
2つ目は、Eコマース全体におけるモバイルデバイス経由の購入率です。現在、フィーチャーフォン、スマホ専用サイトでの購入が十数%程度あるのですが、先に申し上げました、PCサイトへのアクセスの約2割がスマートデバイス経由という点を含めて試算すると、約35%~40%のお客様がスマートデバイス経由での購入という計算となります。
そして、3つ目はお客様のニーズ変化と新しいコンタクトポイントの醸成です。チケット購入完了までのお客様の行動を見てみますと、スマホの場合は80%が10分以内に購入完了となるのですが、PCの場合はその逆で80%が10分以上かけて購入完了されます。
スマホ登場時には、PCとできる限り同じサービスを提供しようと思っていましたが、購入完了までの時間軸を見ていると利用方法、ニーズが異なるのかなと思いはじめています。
よりシンプルに分かりやすくという方向性はPCもスマホも同じなのですが、スマホにおける購買行動はPCに比べより直線的なのではと感じております。また、スマホを活用すればお買い求めいただいた後の当日の空港や機内でのインターネットなど、今まで接点が持てなかった領域でもサービスが提供できると考えています。
また、スマホは他のデバイスに情報がプッシュできる点が利点です。例えば、欠航や遅延があった場合、メールを登録して頂かないと情報を届けることができなかったのですが、そういった場合におけるコンタクトポイントとしての機能もあると思います。
今までのWebコミュニケーションは、大きくわけると購入前とリピートでしたが、今後は買って頂いた後のコミュニケーションも可能となるので、そのフェーズでどのようなサービスをお客様に提供できるのかを考えていきたいと思っています。
── すでにローンチしているスマホ向けの新しいサービスはありますか。
iPhone5発売と連携してPassbookをスタートさせております。初日のダウンロード数は1万件、日々の実績を見ていても利用率は数千件/日の状況です。24時間前にしか使えないサービスなのですが、国内向けのサービスに関しては予約・購入して座席を取って頂くと2か月前より利用が可能となります。
アンドロイドに関しては、おサイフケータイに対応しておりますのでSKiPがICで利用できます。iPhoneのお客様はマイレージカードをご利用いただくか、画面をゲートの前で見せていただくなど一手間いる状況でした。
これがPassbookにより、手間要らずでご利用いただけることになり、この利用数を見るとお待ち頂いていた利用者の方が多くいらっしゃったことを痛感しております。昨年8月中旬にAppleさんよりお声掛けいただき、リリースまでの1ヵ月半で開発しました。自社開発という点では、これまでの中で最速で導入できたサービスです。
