日本最大級のコンタクトセンター関係者/CRM業界向けセミナー
テクマトリックスが主催するコンタクトセンター関係者/CRM業界向けセミナー「テクマトリックス CRM FORUM 2013」が、2月26日にANAインターコンチネンタルホテル東京で開かれた。本稿では多数が開催されたセッションの中から3つを取り上げる。
まず株式会社ベルシステム24 マーケティング戦略本部 新規事業開発部 デジタルコミュニケーションG グループマネージャー 濟木 基成氏による「これからのコンタクトセンターが目指す姿とは? ~顧客の行動プロセスを科学する~」と題したセッションを紹介する。濟木氏は、消費者のコミュニケーション環境の変化と、それによる消費者との新しいチャネルに応じたコンタクトセンターの最適化について講演した。
消費者のコミュニケーション環境の変化
濟木氏が最初に取り上げたのは、消費者のコミュニケーション環境が、携帯電話からスマートフォンにシフトしていることだ。「まだ企業にコンタクトをするチャネルにダイレクトに関わってくるほどの変化ではないが、これからを考えると実はこれが変化に繋がると考えている」と話す。
携帯電話が主流だった時代はSMSやMMS、Eメールがコミュニケーションの主体だったが、スマートフォンへのシフトが起こったことでTwitterやFacebookなどソーシャルメディアの活用が大きく進んだ。そしてもうひとつの大きな流れとして挙げたのはLINE、カカオトーク、commなどメッセージングアプリだ。
濟木氏は携帯電話の発信回数が前年比で0.7%減ったという総務省のデータや、消費者がメッセージ系のアプリを使うようになってEメールや通話、固定電話での通話、さらにはPCのメールもあまり使わなくなったというデータを示しながら、通話からデータ通信上へコミュニケーションが変化しているとする。企業に対するコミュニケーションも、アメリカで起きているように、音声通話によるコンタクトの構成比が相対的に減少し、チャットやメール、ソーシャルメディアの構成比が増えるという状況が遠くない将来に起こるという。
企業の中でも、電話での顧客サポートをやめて窓口をメールだけにしているところも増えてきた。TwitterやFacebookのウォールも含めてソーシャルメディア上で語られている声への傾聴と対応、いわゆる「リスニング」への取り組みをする企業もある。これらに取り組む上で、濟木氏が挙げたポイントは、「デジタルチャネルのコミュニケーションにおける応対品質の管理」と、「新しいチャネルの活用による応対効率の向上」だ。
デジタルチャネルにおける応対品質の管理
コールセンターの電話応対については、これまでに一定の品質基準が作られ重要な運用指標ともなっているが、メールやTwitterを顧客対応チャネルとして利用する時の「応対品質管理の基準はお持ちですか?」と濟木氏は問いかけた。「デジタルコミュニケーションを行う上で、もう1度テキストコミュニケーションを見直しましょうというトレンドが来ている」(濟木氏)
テキストでのコミュニケーションはどうしても効率優先になり、テンプレートで対応しがちになる。お客様からいただく問いもテキストであり、電話であればちょっと不明なことがあった場合にその場で深堀りして質問できるが、テキストだといったん受け取った情報で回答を作成する必要があり、情報が不十分なままでの返答をさらにテンプレートを活用して効率化を図っていくので、筋が通らないメールが横行してしまっているという訳だ。
ベルシステム24では独自のメール品質基準(eMBCA)を持ち、簡潔、共感、信頼、応対マナー、総合の5つの指標によって評価しているが、この5つの指標にもうひとつ、返答までのスピードを項目に加えれば、Twitterやチャットの評価もできると考えているという。
大切なのは、相手が何を聞きたいと思っているのかをしっかりととらえ、適切な回答を組み立てること。その理解力と構成力だという。
新しいチャネルの活用による応対効率の向上
ただ、品質を突き詰めていくとコストがかかり、新しいチャネルにトライすると今のコールセンターの業務が増えることになるため、「どうやって効率化を図ってコストを抑えながら対応を広げていくのかが次のポイントになる」(濟木氏)
ここで濟木氏が提示したキーワードが“応対効率”だ。電話なら1対1、メールも1対1だがリアルタイムでない分効率は電話よりよくなり、チャットなら1対3くらい、Twitterは最終的に開示されるため1対1対Nとなる。日本では現状チャットは広がっておらず、サポートの事例も多くはないが、メッセージングアプリに慣れた消費者が育っており、同じようなインターフェースで企業に問い合わせできれば状況が変わるのではないかという。
こうした変化に対するコンタクトセンター側の準備として「お客様からの情報が完全とは言えない、短文のテキストコミュニケーションによるお問い合わせに対して、なにが問題かを鋭くかぎ分けることができる、問題切り分け能力の高い電話スタッフを、応対効率の高いチャネルにシフトしていくことがポイントだ」と濟木氏は話す。
顧客の行動をとらえた新しい取り組み
最後に濟木氏が取り上げたのは、お客様が疑問を感じてからコールセンターに電話したり、メールを出すまでの間のプロセスを掘り下げようという取り組みだ。濟木氏が示したあるデータによると、電話での問い合わせ全体のうち21%はFAQを見て自己解決しようとしたがそれができずに電話してきたお客様であり、またメール送信フォームからメールしたお客様の40%もFAQを経由したお客様で、ここにFAQページ改善の余地がある。商品やサービスの特性、お客様によってこの比率は異なるが、まずはしっかりと可視化することが重要であると語る。
この改善には、FAQ内の行動ログや検索キーワードなどをしっかりと検証して対応する必要がある。さらにもうひとつのポイントはソーシャル上の声で、例えばiPhoneのホームボタンひとつとっても、お客様によって呼び方は異なるため、TwitterやFacebook、口コミサイトなどで消費者がどういう言葉を使って商品を語っているかをとらえることも、自己解決を促進させる上で重要だという。
濟木氏は、消費者の環境の変化をとらえ、応対品質や効率を高めながら、お客様が自己解決できるよう取り組んでいくことが、これからのコンタクトセンターに対する1つの回答だと締めくくった。
テクマトリックス CRM FORUM 2013の講演動画の視聴が可能です。2013年5月31日までの限定公開となりますので、ぜひご覧ください。詳細はこちらへ