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ソーシャルメディアで変わるこれからのコンタクトセンター【テクマトリックス CRM FORUM 2013レポート】

2013/03/21 13:00

ソーシャルCRMの最前線動向

 最後に紹介するのは株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山 幸樹氏の講演「『ソーシャルCRM最前線』ここまできた!CRMの進化!~最新成功事例とその秘訣~」だ。

 ホットリンクはソーシャルメディア解析ツール「クチコミ@係長」とソーシャルメディアリスクモニタリングツール「e-mining」を提供している。その強みはソーシャルデータの大きさだ。ブロガー3100万人の口コミデータを2006年11月以降のものをリアルタイムで保持し、2ちゃんねるの全データも独占的利用権を持つ。さらに、Twitterに関しても2006年の初期ツイートを含む全データを利用できる権利を保有している。

株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山 幸樹氏
株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山 幸樹氏

 内山氏はこれまでソーシャルデータを分析してきた経験から、「ソーシャルはCRMに使うことが最も本質的だなということがわかってきた」と話し、ソーシャルCRMの最大の価値と、その実現に向けた条件、成功する導入ステップについて説明した。

広告費をかけずに口コミは広がらない

 Twitterの公式アカウントやFacebookで情報を拡散してほしい、TVCMや広告費をかけずにできるだけただで安く自社の商品情報を拡散してほしいという目的を持っている方は多いと思うが、本によく載っている「口コミでこんなに広がりました」というものは1000に1つの成功事例であり、あのような成功事例は「ほとんどない」と考えるべきというのだ。

 内山氏は「ネットの口コミ拡散には適度な情報格差が必要」という。例えば「ねえねえiPad miniってさあ、○○らしいよ」と誰かにつぶやいたとする。このとき、相手と自分にiPad miniという共通の認識があれば、「実は○○らしいよ」という自分だけが知っている情報を持っていることで相手に伝わっていく。

 ところが相手がiPad miniを全く知らなかったら「ええ、なにそれ、興味ない」で終わってしまう。口コミが広がっていくためには、相手との間に共通テーマの認識が必要なのだ。新商品を口コミで広めようとするならば、やはりマスメディアである程度告知して認知させ、その上でネットや口コミ、YouTubeなどにほんのちょっとだけここぞというエッセンスを乗せる。それが口コミが広がるための非常に重要なポイントになる。

 「こういうことを無視して、広告費をかけずに『口コミを広げたい』『Twitterを拡散してほしい』といっても広がるわけがない。ここが皆さんのソーシャルCRMへの期待と実際が大きく異なるところ」(内山氏)

発信するのではなく「聞く」のがソーシャルCRM

 内山氏のソーシャルCRMに対する考えはこうだ。「リアルな世界の生活者の頭の中というのは、いまツイッターやフェイスブックを通じて、ネットの世界に鏡のように映っている。いまネットの世界の情報は、ほぼ網羅的にリアルタイムに収集し自由な切り口で検索できるようになっている。これは人工衛星から地球に住んでいる人の頭の中をのぞき見られるツール/技術がたかだか10万円ちょっとで手に入るようになった」

 情報を発信するのではなく、お客様の声をソーシャルメディアから聞くことによって、いままでアンケート調査やグループインタビューで数カ月かかっていたことをリアルタイムで口コミでやってしまえるうえ、年代別や地域別などいろいろな検証がすぐにでき、過去のデータとの比較も難なくできる。また、これまでのCRMでは顧客は自社のデータベースにいた。

 しかし、自社から離れてしまった顧客や、競合他社しか使っていない顧客がどうなっているかは従来のCRMではとらえることができなかった。しかし、ソーシャルメディアにリアル世界の人々が映っていて、そこが検索できるなら、自社のデータベースになっていると考えることができる。「従来の自社顧客だけのデータベースにプラスしてソーシャルのデータベースも含めたCRMをやっていくということで、これまでできなかった大量の『聞く』ができるということがソーシャルCRMの大きな可能性だ」と内山氏は説明する。

 内山氏が考える本当のソーシャルCRMの価値とは、「お客様の生の声を社内に伝えて社内で“WOW(ワオ)”という声を起こし、なんらかの改善をする。そしてイノベーションが起きて本当の顧客満足が生まれる」ことだ。この好例としてあげたのはソフトバンクグループの孫正義社長のTwitterの活用だ。よく「あれは孫さんだからできた、うちでは無理」と言われるが、内山氏は「そんなことはない」と否定し、ホットリンクが1年前に発表した「カイゼン@係長」を使えば可能だという。

 「カイゼン@係長」では、ソーシャルメディアから商品名や社名、競合名などで情報収集したものに「顧客の印象」といったラベルをつけたり、担当者に知らせたり、該当のツイートにコメントを添えて該当部門にメール通知したりできる。さらにそれに対してコメントをつけて社内でコミュニケーションができ、改善につなげられるのだ。また、改善を実施することになったら「やりましょう」ラベルをつけたうえ、それらの案件をまとめた「やりましょう」ページも簡単に作成できる。

成功するソーシャルCRM導入ステップ

 内山氏は「カイゼン@係長」のモニター導入事例から見えてきた、成功する導入ステップを紹介した。

 まず自分一人がログインしてソーシャルメディアの口コミを分析する。分析レポートで一番最後につけるブログやツイッターのキャプチャは、喜ばれることが多く「動かなきゃいけないね」となる。これが生の声だからこそ伝わるソーシャルCRMの1つのポイントだ。

 次に自分がいる部門内の人たちと口コミの声を共有する。そしてツールを使ってコミュニケーションを始め、「このツイートいいね」というような会話をする文化を、普段顔を合わせている部署内でまず作る。それができるようになって初めて、他部門とポータルを共有する。このとき「最初は、害のないものから」というのが絶対的なポイントだという。

 最初にお客様からの不満の声を共有するとといやがられるので、「喜びの声ポータル」をまず作る。お客様の喜びの声を共有することで、「うちの製品は喜ばれているんだ」と実感ができ、仕事に対するモチベーションが上がる。また、コールセンターにかかってくる電話で「あなたはそういうけどネットではこう書かれている」と言われることがある。そういうとき、解決の情報をポータルでシェアすることによってコールセンタースタッフのリテラシーが上がっていくという効果も得られているという。

 他部門と協力したりソーシャルの声に慣れてきたところで部門横断型のチームを作る。ここまでできたら、自社の目的に応じたポータルを作成し、イノベーションと改善を進めていく。例えば、商品改善をしたい場合には、“喜びの声”のほかに“おしかりの言葉”をポータルで共有していく。そして、「実際にどうなのか確認してみます」「改善しましょう」といったやりとりの上で「やりましょう」となったときはラベルをつけていけば社内の改善ステップが目に見えるようになる。

 導入ステップの最後として、お客様の声を聞いて、きちんとそれを社内に共有し、改善し、より大きな影響力、大きな顧客接点の中でフィードバックできるようになって初めて、「改善できたので不満の声どうもありがとうございました」と答える。「ここができない中で、アクティブサポートやソーシャルメディア上で会話だけしていても、大きな改善は得られない」(内山氏)

 内山氏は最後に「ソーシャルCRMで一番ポテンシャルが出せるのはお客様の生の声を聞けること。そして聞いた声を基に社内で“WOW(ワオ)”という声を呼び起こしてイノベーションを起こすこと、これがソーシャルCRMの最大の価値だと考えている」とまとめて講演を終えた。

講演動画配信中

 テクマトリックス CRM FORUM 2013の講演動画の視聴が可能です。2013年5月31日までの限定公開となりますので、ぜひご覧ください。詳細はこちらへ

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