SASが、従来のデータベースの制約を突き崩す
続いて、SAS Institute 上席副社長 兼 最高マーケティング責任者(CMO) ジム・デイビス氏が基調講演を行った。現在のビジネスでは、複雑な分析を瞬時に行い、目の前の顧客に提案を行なうようなシーンが生まれており、数秒で答えを求められることもある。そのときに分析対象となるデータは、データベースに収められたものだけではない。

デイビス氏は「ソーシャルはもはやオプションではない」と語る。データベースの構造化されたデータだけでなく、ソーシャルなどの非構造化データを組み合わせて分析する必要がある。その結果、データはより巨大化し、複雑化する。デイビス氏はビッグデータを「従来のデータベースシステムの処理能力を超えたデータ」と定義し、そのためのソリューションをSASが提供すると語った。
巨大化したデータは、データベースにデータを入れるのも、抽出するのも時間がかかる。従来のデータベースシステムには限界があり、新しいプラットフォームが必要となる。そのために、SASが提供するのが「High-Performance Analytics」だ。グリッドコミューティングによって、プロセスを分散するだけでなく、データベースの内部で処理を行い、純粋なインメモリアーキテクチャによって、従来のデータベースの制約を突き崩すと述べた。

このように、多様なデータを高速に処理するだけでなく、分析した結果をさまざまなヴィジュアライズして提示する「Visual Analytics」の機能も提供。さまざまな面からビジネスシーンをサポートする。
ビッグデータのリーダー、アマゾンの快進撃
午前の部の最後は、マッキンゼー・アンド・カンパニー プリンシパルのポール・マクナーニ氏による特別講演が行われた。マクナーニ氏は、英国のスーパーTESCO、オンラインショップAmazon、クレジットカード会社のCapital Oneがどのようにデータ分析をビジネスに活かしているのかを簡潔に紹介した。

このうちアマゾンは米国でトップシェアを持っており、ウォルマートとシアーズと売上の差が4倍近くある。普通は最大手は頭打ちになりがちだが、アマゾンは2011年の1年で45%伸びている。対してウォルマートとシアーズは17%と12%。「一人勝ちとはこういうことかというくらい、ずっと勝ち続けている」(マクナーニ氏)
この成長はどうやって実現しているのか。ひとつは技術への投資。通常の小売企業は売上の1.5%か2%くらいだが、アマゾンの場合、売上の5.7%くらい投資している。レコメンデーション、顧客からの問い合わせ対応の自動化だけでなく、サプライチェーンのマネジメントも洗練されている。
アマゾンのレコメンデーションは、思っているほど複雑なものばかりではないが、その売上に与えるインパクトは大きい。2000年時点で、レコメンデーション系の売上は5%と言われていた。アマゾン全世界の売上は6兆円くらいの売上があるが、現在はその36%くらいを占めている。つまり、レコメンデーションだけで世界で2兆円くらいの売上を上げていることになり、そのインパクトは大きいとマクナーニ氏は言う。
日本ではアナリストが枯渇している
マクナーニ氏はさらに、こうした分析を支えるアナリストの人材が日本では枯渇していると指摘したうえで、毎年リクルートの時期になると、グーグルとアマゾンが卒業生を奪い合うという、カナダのウォータールー大学を紹介。この大学では、コンピュータサイエンスと統計に長けた学生が多く、ウェブ企業がほしがる人材を輩出しているという。ひるがえって、日本にこうした大学があるかを考えると、これから先の人材育成には大きな課題があると言わざるをえない。

今後のビッグデータ人材の需給状況を考えると、アナリスト不足は世界的な課題でもある。マクナーニ氏は、GDPあたりのアナリストの数はインドが飛びぬけて多いというデータを紹介し、日本はインドに頼ることになるかもしれないと語った。さらに「このことは国策に関わるくらいの問題であると感じている」と述べ、日本企業の競争力に与える影響が大きいことを指摘した。