刺さり方もいろいろ
では、実際のレスポンスはどうだったのか……というのはちょっと後回しにして、「なぜこんな形をしているのか」というポイントについて考えてみます。
実は、このDMの対象者リストは、「理工系大学の研究室」という超ミクロなものだったのです。では、「理工系大学の研究室」とはどういう所なのでしょう?
- 日本全国に総数で2,000室以上存在(名称はさまざま)
- 研究者たる教授または助教授(現在は准教授)がリーダーで、裁量権は彼らにある
- その他の構成員として、講師、助手、大学院生が存在
- ネットワークインフラは共通で、研究に使用する機器については個々の予算内で購入
このようなデータを基に、やはり教授層に訴求するツールを作るということになり、最適なキーイメージを考え出す必要が生まれました。
私たちが考え出したキーワードは、教授の年齢層でした。ある調査によると、日本の「教授」と呼ばれる層の平均年齢層は51.4歳、就任の目安は45歳だそうです。ですから、彼らが大学在学中、もしくは大学院生や助手時代に、基礎研究で8inchのフロッピーディスクドライブの付いたコンピュータを使っただろうことは想像に難くありませんでした。
また別要素としては、このメーカーがオフィス製品を開発し始めてからちょうど20年に当たったタイミングだったこともあり、そこで立てたクリエイティブ戦略は、以下のようなものになったのです。
1) 教授たちに「20年」というキーワードを与える▼2) コンピュータを使い始めた頃の自分を想起▼3) 当時ポピュラーだった8inchのフロッピーをモチーフにして、彼らにノスタルジーを感 じさせる▼4) 20年年の歴史とそこから導かれる対象製品の「リーズナブルで安定・高性能」感を 訴求
また別の聞き取り調査によると、毎日大学の研究室に届くDMはかなりの量になるらしく、平凡なクリエイティブでは埋もれてしまう恐れがありました。もちろん情報の絶対量としては大判のブローシュアやフライヤーとは比べものになりません。また、レターが入れられませんでしたので、ブローシュアの表面にレター的な案内文を入れざるを得ず、その結果、製品に関する記述が限りなく少なくなることは目に見えていました。
しかし、フォローコールを連動させることで、DMそのものでダイレクトなレスポンスを取らなくても良かったこともあり、シンプルでインパクトのある「作品」として仕上がったというわけです。
