結局はStrategic Designingである
実は、今回のような企業・団体向けDMは、リーチを確保すること自体が非常に難しいのです。リストが個人名になっていない場合もありますし、明らかに広告物であるとわかってしまうと、ターゲット個人に届く前に、総務などの部署ではじかれてしまう可能性があるからです。
そのような難しい状況にありながら、この事例では(漏れ聞いたところでは)40%弱には少なくとも届いていることが確認されています。フォローコールでHot Leadに導くことが想定スキームであったため、最終的な申込率がどれほどのものだったのか正確にはわかりませんが、そのインパクトについては、クラインアント/コンシューマーともども、認めるところであったと思います。
では、私たちがこの事例をデジタルマーケティングに応用するとしたら、何がクリエイティブのポイントになるのでしょうか?
まず、対象者を細かく設定し、訴求ポイントを絞り込むこと。インターネットはボーダーレスのメディアだと言われますが、対象セグメントのはっきりしていないWebサイトは訪問者が少なく、固定層も付きにくいものです。その結果としてメディアとしてのポジションが曖昧になり、「二兎追う者は一兎をも得ず」という結果になってしまうのです。
ここでは大学の研究室(=教授)というターゲットが明確ですので、そのインサイトに積極的に踏み込む手法を取っています。このように、ターゲットのインサイトに合わせてテーマやモチーフを絞り込んでいくことがDRMでは重要な点になるのです。
次に、他チャネルとの連動を考慮すること。Webサイトの場合でも、HTML部分だけですべてを収束させることは難しくなっています。以前ならば紙媒体や電波媒体の補完、または申し込み機能としてデジタルが存在していたものですが、最近では逆転現象が起こっており、むしろWebサイトがメインで紙や電波媒体はその集客・告知機能になっているケースも多いようです。
このDMの事例は、これがドアノッカーとなって、その歴史や世界観を共有させ、次に続くフォローコールの確度を高めることが、私たちが設定した役割だったのです。つまり、いたずらに媒体(皆さんではWebサイト)に複数の役割を持たせるよりも、様ざまなメディアと連動することを前提に、各々のロールを明確に切り分けていく手法が必要なのです。
私たち電通ワンダーマンは、このような戦略やマーケティングと連動したクリエイティブを戦略的デザイン(Strategic Designing)として、大きな流れの中で捉えているのです。