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テレビCMの投下量と検索数、そして売上げとの相関関係は?オフラインアトリビューションの基本【アトリビューション編:第6回】

モデリングにより、未来の売上を予測する

 この際に使う基本的な分析手法の中で抑えておくべきものは、重回帰分析(重回帰分析について詳しく知りたい方は、こちらの連載「Excelビジネス統計~アンケートの設計と分析」が役立つかと思います)になります。さきほど、テレビCMの投下量と検索数の相関の例では、y = ax+b という式で表現できました。これは、説明変数(x)が1つなので単回帰分析と呼ばれることもあります。これに対して、説明変数が2つ以上ある場合を重回帰分析と呼んでいて、以下のような式で表現できます。

Y = b + a1X1 + a2X2 + ‥‥ + aiXi

 たとえば、目的変数(Y)に売上をおき、説明変数(X)にテレビCMやラジオCM、新聞広告、雑誌広告、バナー広告、リスティング広告などの投下量を入れていくことで、複数のメディアが売上にどのような影響を与えるか、その貢献度を統計的に算出することができるようになります。

 実際の分析では、広告出稿量以外にも売上に影響を与える要因があるため、さまざまな要因を検討し、できる限りのデータを集めて分析をおこないます。たとえば、広告出稿以外とは、自然検索流入や外部リンク流入などのアクセスデータ、キャンペーンやイベント情報、ブランド認知などブランド力関連データ、商品の価格変動、季節変動や曜日別の変動、競合他社の広告出向状況、競合他社の商品の価格変動など、さまざまな要素があります。

 このように、重回帰分析の式(重回帰式ともいう)を、さまざま要素を加味しながら作成していくことをモデリングといいます。複数のモデルを作成しながら、最も統計的に当てはまりのよいものを探していきます。

参照:marketingQED社/ブレインパッド社より

 最も統計的に当てはまりのよいモデルとは、たとえば、売上が目的変数だとすると、過去の売上推移の値とそのモデルを使って算出した売上推移の値が合致するケースです。ピッタリ合致することはありませんが、ほぼ同じ値が算出できるモデルができれば、そのモデルを使って、未来のシミュレーションを行った場合も、ほぼ同じような値が算出できるはずだと考えます。未来の売上予測に使えると判断するわけです。

売上を伸ばすためには、どの媒体の出稿量を増やすべきか

 未来のシミュレーションに使えるモデルができあがると、そのモデルを使って、売上を最大化する広告出稿金額を算出することができます。また、一定予算内で売上を最大化するための広告予算配分を広告媒体ごとに算出することができるようになります。

 さらに、重回帰分析のほかによく使われる手法として、構造方程式モデリング(共分散構造分析ともいう)というものがあります。これは、広告出稿やその他のさまざまな要素がそれぞれどのように影響しあっているかを統計的に把握し、最終的にレスポンスにどのように貢献しているかを構造的に可視化するものです。

※クリックすると拡大図が表示されます
マーケティング構造の可視化

 売上を伸ばすためにはどの要素を上げるべきか、つまりどの媒体の出稿量を増やすことが重要なのかが、構造的に把握することで分かるようになります。

 たとえば、売上に対して最重要な要素は認知系指標の中の非助成第一想起であり、それを上げるためにはテレビCMの投下が一番有効である、とか。あるいは、認知よりも好意度の方が重要で、それを上げるためにはテレビCMに併せて雑誌広告をもっと増やした方がよい、などを統計的に理解できるようになります。

 また、リアルの店舗への送客が目的の場合には、広告主サイトの中でどのページのアクセス数が増えると店舗来店数が増加するかなども分かります。

 例えば自動車メーカーなどは、ディーラー店舗検索や試乗予約などをコンバージョンポイントにしてウェブマーケティングをおこなっていることが多々ありました。しかしながら、構造方程式モデリングによって可視化すると、実際には、車種紹介ページのアクセスが増えたときに店舗来店数が増加するという構造が分かってきました。そのため、ウェブマーケティングの誘導先も変更するケースが出てきています。また、携帯キャリアのサイトでは、携帯端末の紹介ページと店舗来店数の相関が高いことが分かり、それを活かしてマーケティング戦略を構築しているところもあります。

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リスティング広告とテレビCM、投資効率の比較

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/07/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/17867

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