ブランデッド・コンテンツ制作のヒント
「ブランデッド・コンテンツ」と呼ばれるものの第一の特徴は、従来の広告の枠を越えていることに他なりません。だからこそ、従来の広告の作り方や常識とは、大きく異なるポイントが存在します。ここでは、従来の広告の考え方と対比させる形で、効果的な「ブランデッド・コンテンツ」制作のヒントについて、見て行きましょう。
従来の広告では、「どのブランドが、何をメッセージしているのか、明確に伝わることが良い」とされて来ました。しかし、「ブランデッド・コンテンツ」では、「メッセージが明示的に伝わらない=広告らしくない」ことが、返ってプラスの要素となりえます。

別の言い方をすると、いままではひとつの広告の中で、ブランドのメッセージとしてきちんと完結している必要があったのですが、「ブランデッド・コンテンツ」では、むしろ一見未完成の状態で消費者に手渡された方が効果的なケースが多いのです。この部分のアタマの切り替え、態度の切り替え、体質の切り替えみたいなことは意外と難しいので、あなたの広告でのキャリアが長ければ長いほど、注意が必要だと思います。
伝える視点と受け取ってもらう視点の違い
また、従来の広告では、複数のメディアを活用する場合、ひとつのビジュアル要素(One Look)とひとつのメッセージ(One Voice)が望ましいとされて来ました。いちばん単純なやり方で言えば、テレビCMも新聞広告も駅貼りポスターも、同じタレントの同じ笑顔があり、同じコピーが同じ書体で書かれている、といったことです。
それに対して「ブランデッド・コンテンツ」では、コンセプトあるいはメッセージの中身の統一は必要ですが、一方で接点(メディア)ごとに最適なコンテンツを作り出すことが必要だと考えられます。そして、接点ごとに最適なコンテンツを作り出すためには、はっきりした統一性はむしろマイナスとなるのです。

従来の広告では、いかに効果的にメッセージを消費者に伝えるかと考えて来ました。それに対して、「ブランデッド・コンテンツ」では、いかに効果的にメッセージを消費者に受け取ってもらえるかと考えます。「ブランデッド・コンテンツ」の考え方では、コミュニケーション上、徹底的に受け手が優位だと捉えるわけです。言葉を変えれば、第2回目で触れたように、情報の送り手がブランドをコントロールするというコミュニケーションの考え方ではなく、受け手がブランドをコントロールするという考え方に立っていると言えるでしょう。