既存データすら分析できない理由 システムが持つ全体性のわな
いま必要とされているデータ・アナリティクスは、構造化、半(準)構造化、非構造化データを組み合わせ、各種アルゴリズム(関係性、分類、分解、時系列、予測・推定、異常値の発見など)を活用して、適切なタイミング、形式で分析結果を提供する仕組みだといえます。
構造化されたデータでは基幹業務のデータ、準(半)構造化データではテキスト、センサー、GPS、Webログ、ストリーミング・データ、非構造化データでは音声、静止画、動画などのデータが、それぞれの代表例として挙げられます。
とはいえ、そうしたビッグデータへの取り組みの前に、既存のデータですら十分に分析がなされていないという話をしばしば聞きます。データベースにデータが蓄積されるばかりで、適切に活用されなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
ITの歴史をたどれば、ERPの時代に業務別システムは統合化され、データは一元管理されたことになったはずです。では、なぜ長い年月をかけて成熟化させてきたはずの情報システムが、このような状態になっているのでしょうか。ここで注目したいのは、「システム」そのものがもつ全体性という特徴です。
データの壁を超えられない基幹システム
情報システムであれ、物流システムであれ、およそいかなるシステムでも、まず設計段階で、各要素が最も無駄なく動き、システム全体の最終目的が達成できるように構想されます。こうして効率的、効果的なシステムが完成するわけですが、システムは全体性をもつゆえに、常に孤立化の危険にさらされます。
外部システムあるいは上位システムからみた場合、システムの内部構造を問題にしないときには、インターフェースを備えた「ブラックボックス」として認識して一向にかまわないのですが、意図せずにブラックボックス化してしまうと、サイロ型(日本語でいえば蛸壺化というとニュアンスが近いかもしれません)と揶揄されるような孤立化が起きてしまいます。
情報システムがサイロ化されたデータ(siloed data)の集合体として自己完結してしまうと、さまざまな弊害を引き起こします。いくつかの例を挙げてみましょう。
1つ目は、SCM(Supply Chain Management)です。SCMは、サプライチェーン全体の最適化を目指しますが、個々の取引相手のやりとり(業務レベルからプロトコルまで)のインターフェースが統一できないと、効率が損なわれてしまうことがあります。また、多くの場合、SCMは受発注処理の表面部分では威力を発揮していますが、現実には内部業務システムとの連携が思ったほど進んでいないのが実情です。
2つ目は、ERP(Enterprise Resource Planning)です。ERPはバラバラに作られた業務システムをひとつのプラットフォームに統合するという画期的なコンセプトですが、機能の部分導入や組織一部での導入などの場合には、データが効率的に統合できず、ERPとERP以外のシステムとの接続部分で本来の良さが発揮できません。
3つ目はデータベースです。RDB(Relational Database)は、データのインテグリティの保証が強く求められるため、現場サイドで作っている営業メモなどのテキストデータ、顧客からのVOCなど、RDBの構造に乗りにくいデータとなかなかうまく融合することができません。
このように、一般にシステムは壁(=システムのバウンダリー)の内部では強固でも、システムの接続部分や連携部分では脆弱だといえることになります。システムの全体性のわなということができるでしょう。
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