「デザイン思考」の5つのステップ
それでは、d.schoolのやり方に従って、「デザイン思考」の5つのステップを見ていきましょう。これはビジネスに、ロジカル思考以外の考え方を持ち込む試みでもあります。
ステップ1:Empathize
ステップ1はEmpathizeで、共感する、理解する、感情移入するなどの訳語が充てられます。課題の文脈に沿う形で、人々が、何故どのように行動するかを、観察し関わり見て聞くことで、インサイト(時に本人も気づいてないような考え方や価値観)を見つけて行きます。
ステップ2:Define
ステップ2はDefineで、定義する、意味を明確にする、などの意味合いです。取り組んでいる課題の焦点を絞り込み、着眼点を明確にします。
ステップ3:Ideate
ステップ3はIdeateで、アイディア開発、創造などの意味だと考えられます。革新的な解決策を探し、予想外の領域を探求します。
ステップ4:Prototype
ステップ4はPrototype、プロトタイプです。前のステップで探り出した可能性を、実際に試しながら熟考して行きます。ここで言うプロトタイプは、壁に貼ったポストイットや自分で組み立てた装置、ロールプレイング、ストーリーボードなどを指します。
ステップ5:Test
ステップ5はTest、テストです。ユーザーにプロトタイプに触れてもらうことで、フィードバックを得るようにします。ここでは、それまでトライして来たEmpathizeを再び行い、着眼点を見直し、プロトタイプを再度構築することにつながります。このような5つのステップを繰り返し行い、解決策の精度を上げて行くのです。
「デザイン思考」をビジネスの解決策開発へ活用する
筆者は長い間広告代理店で、テレビCMや駅貼りポスター等の表現アイディア開発(文字通りのデザインも含む)に関わって来ましたが、ここに述べられている5つのステップは、広告代理店で行われている表現アイディア開発のプロセスに、きわめて近いものだと感じました。ただし、広告代理店における表現アイディア開発のプロセスは、一般的にかなり属人的で、5つのステップといったものにはまとめられていません。
そして“表現アイディア開発”という特殊な分野だけではなく、ビジネスの解決策開発一般に使えるように考えられているところが、「デザイン思考」の特徴でしょう。我々の住む成熟社会において、従来とは異なる“イノベーティブ”な発想や解決策は、ロジカル思考中心の議論からは出て来づらいのが現状です。そこで期待され注目が集まっているのが、「デザイン思考」というわけでしょう。