東大、京大、慶応なども、ぞくぞく「デザイン思考」的なプログラムを開始
こうした「デザイン思考」的なプログラムは、ここ数年、日本国内においても注目を集めています。

その草分け的存在は、東大の全学横断プロジェクトであるi.school(アイ・スクール)でしょう。2009年6月に立ち上がったi.schoolのウエブサイトには、イノベーションの学校「東京大学i.school」と題して、「創造的な課題に対するプロセスを設計できるようになること。イノベーション---人間の行動、生活、考え方や価値観を動かす、画期的で不可逆な変化---を創り出せる人材になること。それがこのちょっと変わった“学校”で学ぶ生徒の目標です」と記されています。
「デザイン思考」というキーワードこそ使用されていないものの、従来の論理思考を超えた方法論でイノベーションを起こそうとする点で、「デザイン思考」的プログラムと言っていいでしょう。それは、このプログラムのエグゼティブ・フェローとして、IDEO副社長であるTom Kelly氏、スタンフォード大学d.schoolのBarry Katz教授が名を連ねていることからも明らかだと思います。
筆者は縁あって、このi.schoolの授業にオブザーバーとして参加したことがあります。参加した授業では、茹でてないパスタとタコ糸とセロテープとハサミが与えられ、パスタをつなげて、デスクからどれだけ遠くまで(どれだけ長くではない)到達させられるか?という課題に、3人1組になってチャレンジしました。単純につなげて行くと、パスタの重みで先っぽが床に付いてしまい、距離は稼げません。独自のアイディア、解決策が必要です。根本を太くするチーム、途中で補強することにトライするチームなど、いろいろ。筆者は東大生2名とチームを組んで、なんと10組くらいの中でチャンピオンに!その記録はいまだに破られてないとのことで、一部からは“パスタ・チャンピオン”と呼ばれています。笑

こういった「デザイン思考」的なプログラム、イノベーション教育プログラムは、幾つかの大学で見られるようになっています。慶應義塾大学SDM、京都大学デザインスクール、東京工業大学、九州大学芸術工学研究院、東北大学SSDなどです。
これらのプログラムの関係者が集まって、今年2013年3月には、第1回イノベーション教育学会が東京大学本郷キャンパスを会場に開催され、筆者も参加しました。そこでは、「デザイン思考」を含むイノベーション教育について、熱い議論がかわされました。発表者や参加者の中には、メーカーやシンクタンクなど産業界の方も少なくなく、「デザイン思考」のビジネス活用への関心の高さがうかがえます。
混沌とした世界を「デザイン思考」で切り拓く
この「デザイン思考」教育、あるいはイノベーション教育を行うビジネス・スクールとして世界的に名を馳せているのが、デンマークのKaospilots(カオスパイロット)。カオス(混沌)を乗り切るパイロットを育て上げるとの想いから、この名前は付けられています。
筆者は6月に、このカオスパイロットを訪れて、クリスター校長にインタビューを行ってきました。次回第2回は、カオスパイロットにおける「デザイン思考」教育の実際をご紹介します。お楽しみに!