作る側のこだわりが、コンテンツに結び付いていない
モデレーターの石黒氏が「現在テレビ局が取り組んでいるネットサービスを活用した番組づくりに物足りなさを感じる」と述べると、堀江氏はテレビとネットの番組に自ら出演した経験をもとに、コンテンツに対する姿勢の違いについて言及。「テレビの場合は、コンテンツをつくる側が凝った映像をつくりたがる。制作の現場は映像やカメラワークにすごくこだわっているが、そのこだわりがコンテンツに結び付いていないのではないか」と指摘した。

ネットの生放送では、放送枠を出演者がぎりぎりまで議論に使うことができ、リアルタイムでコメントが流れ、アンケートをすぐ取ることもできる。そうしたネット番組の自由さや即時性に魅力を感じている堀江氏は「テレビの役割は、広告効果も含めてどうなんだろう」と疑問を呈した。
二極分化するテレビのコンテンツ

その一方で、ネット的なコンテンツづくりが別のかたちでテレビ番組づくりに影響を与えていることを堀江氏は見逃さない。民放では、内容が薄く、作り込まれていないけれど視聴率が取れている局と、逆に中途半端にコンテンツを作り込んで失敗している局があり、視聴率はもちろん売上も差が出ている。しかし、ネットにおいてもリアルタイムに反応が返ってくるようなコンテンツが増え、「ネットもテレビも作り込まなくなっている」と指摘する。
その一方で、NHKは受信料と優秀な人材をベースに、スポーツやドラマ、ドキュメンタリーなどのコンテンツで、内容の濃い視聴率がとれる番組づくりを展開。今年大きな話題となった深海に棲むダイオウイカを10年かけて撮影した番組など、NHKならではの番組づくりを例に挙げ、コンテンツづくりが「二極分化している」(堀江氏)。
それに対して有吉氏は、「テレビの場合は、この時間の中でこう持っていこうという、ある種の意思がある」と述べると、堀江氏は「ネット生放送でも意思はある」と反論。現在のテレビ局の番組づくりに“テレビっぽさ”を感じないと言う。そして、ニコニコ動画の「ニコニコチャンネル」や「ブロマガチャンネル」などの月額課金システムを挙げ、自分が2005年にやりたかったのは「NHK化」だと述べた。
これは、NHKの受信料とは違って、ボランタリーに自分からお金を払うネットのサイトを開設し、テレビ局のフォロワーを増やすこと。「その努力をしなかったのが、テレビ業界の凋落の原因だと思う。テレビ局が今一番注力しているのは不動産。あまりコンテンツぽくないですよね。自分たちの本質を見失ってないですか?」と苦言を呈した。
堀江氏が持論を展開するなか、モデレーターの石黒氏は突如、ワタナベエンターテインメント代表取締役会長・吉田正樹氏に呼びかけ、ステージの上へと招き上げた。