まず一つめは「触れてもらうこと」、つまりアバターと3D空間を通じて “身体的な体験”を得てもらうことである。懐疑的に見る向きもあるが、既にニンテンドーのDSやWiiのように“感覚”が得られる楽しさは知られており、遊んだり、着たり、歩いたりといった経験をセカンドライフで得られる可能性は十分にある。そして2つめには、参加したユーザーに対して感謝の気持ちを表すことである。セカンドライフでは、アバターのアイテムやノベルティの他に、実際の貨幣に換金可能な仮想通貨「リンデンドル」を感謝の印として容易に与えることができる。
そして3つめの最も重要なポイントとして、飯野氏は「企業側がセカンドライフにログインして、ダイレクトに顧客と直接触れ合うこと」をあげる。そして最もハードルが高いが、最も活用すべき3Diの利点であるという。これまではWebでは、来訪者それぞれにリアルタイムかつダイレクトに対応することはできなかった。それが可能になりつつあるというわけだ。
とはいえ、3Diの費用対効果については未知数。二の足を踏む企業も多いだろう。当然、スペックや速度、人との親和性、法整備といったハードルもある。しかしながら、飯野氏は、かつてのインターネットがそうであったように、問題は時代とともに解消されてきたことを指摘し、「ECショップがそうであったように先見性を持って挑戦してきた企業が成功している」として、三越の取り組みの例を挙げた。三越は百貨店業界で最も早くECショップを開設したことで知られているが、10年経過後の現在の売り上げは、初年度の1000倍を超える。現在、セカンドライフ内にバーチャルショップを開設しており、3Diの可能性を探索中だという。飯野氏は「ぜひ、時期を決めて実験するつもりで、3Diについても挑戦を」と呼びかけた。
アバターを介するコミュニケーションの価値
そして再び徳久氏へが登場し、「リッチでインタラクティブな空間で、アバターを介してリアルタイムにコミュニケーションできる場としての価値を、もっと理解してほしい」と企業に対してのメッセージを述べた。そして、インターネットのコミュニティが、ユーザーの参加があってこそ活性化してきたことを指摘し、出来上がったコミュニティに参加するということだけでなく、企業もインターネットの世界をつくる一員として気軽に参加し、世界を創り上げることに価値があるという。
最後にセカンドライフのほか、同様の3Diを活用した国内外のサービスを紹介しつつ、3Diの発展性についての解説が行われた。徳久氏は、その可能性として「コミュニケーション」「クリエイティブ」「エンゲージメント」の3つの領域をあげ、「それぞれのメリットとデメリットを鑑みつつウォッチしていくことが望ましい」と語った。

インターネットの黎明期となぞられがちだが、インターネットには既に10年以上もの蓄積がある。PCの他に、携帯電話を活用したサービスも急速に発展してきており、新たなインターフェースとしてのポジションを確立しつつある。また、検索技術やEC、コンテンツ配信、ブログやSNSといったサービスも普及している。そうした中で3Di技術が十分に成熟した時の活用範囲は、おそらく膨大なものになると予測される。広告や検索に3Di技術は大きな価値を与える可能性が高い。そうした時に慌てることのないよう、企業は取り組むべき時期にきているのかもしれない。
