事例:大幅に休眠顧客を掘り起こす
では具体的に、Ponta提携社のキャンペーン事例を見てみよう。肝心なのは、「ポイントというコストはある程度はかかってしまうので、このコストダウンを将来的にどう図っていくか、という視点」と内山氏は指摘する。
例えばA社にて、近隣商圏の別の加盟店は利用しているのに自店にあまり来店していない潜在顧客に、「来店するとボーナスポイント進呈」というキャンペーンを実施。すると3か月休眠会員で6.4%、6か月で5.7%、非来店ユーザーで1.5%が来店しボーナスポイントを受け取った。また、翌月、翌々月以降の継続来店率が50%を超え、大幅な休眠顧客掘り起こしにつながった。

そこでロイヤリティ マーケティングでは、来店した顧客へアンケートを実施。意外にも、来店理由は「ボーナスがもらえる」ことよりも、「この店でPontaポイントが付くのを知らなかった/改めて知った」「品ぞろえがいい」ことが上回った。
「それなら、何もボーナスポイントというコストをかけなくても、ただお知らせするだけでよかったのです。それが分かれば、次の施策のコストをぐっと抑えることができる。こうした知見を得ることが重要です」
ちなみに、A店を使わなくなった理由として多かった「近くになくなった(自分が引っ越した、閉店したなど)」ことを踏まえると、自店独自のポイントカードでは処分されてしまうところ、提携店では使い続けてもらい新店のオープンなどのアプローチもできる。
事例:ローソンストア100の商品開発/ヒマラヤの顧客分析
またPontaでは、より詳しい購買情報提供に同意している50万人のリサーチ会員を有している。商品aを購買している人に商品bを試してもらい、感想などを取ることが可能だ。こうしたデータは顧客心理に関わる貴重な定性情報として、複数の提携企業が活用している。さらに別途、希望者によるモニター会員を構成し、例えば「ローソンストア100」では商品開発企画「Ponta会員1万人の理想のスイーツプロジェクト」が実施されるなど、顧客の生の声を活かした展開も行われている。
最後に内山氏は、スポーツ用品店「ヒマラヤ」の事例を挙げ、改めて「データのみに頼らずに顧客の心理を見つめることが重要」と強調する。同店のテニス用品カテゴリにて、ヘビーユーザーとライトユーザーの属性や利用状況を分析したところ、中学1年や高校1年の部活動が始まる時期にフレームを購入したユーザーがヘビーユーザーになりやすいことが数値的に明らかになった。
「理由の一つは“おもてなし”ではないでしょうか。メインツールであるフレームを購入する際に親身に相談に乗ってくれたことが安心感につながり、その後も小物の購入で頻繁に来店していると推測されます。言い換えれば、それが店舗のロイヤリティです」
高度な分析技術ももちろん必要だが、事象の背景を考えて将来のポテンシャルを見出すのが運用会社の責務だと内山氏。顧客の心理も十分に考えることが、よりよいマーケティング効果を生むとし、講演を結んだ。