IABとDACの新たな関係
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)は10月、米国のネット広告業界団体「Interactive Advertising Bureau(IAB)」が開発・標準化を進めている次世代のアドフォーマット・コンテスト「Rising Stars」(※)の成果をもとに、日本国内でプレミアム広告市場の活性化を推進していくことを発表。そのパートナーとして、DG MediaMind、Crisp Media、MOATの3社と協働する。
今回その1社であるCrisp MediaのCEO、Jason Young氏が来日。DACのメディア本部長、豊福直紀氏とともにお話をうかがった。
―IABは、米国におけるオンライン広告の売り上げの86%以上を担う500以上の媒体社、テクノロジー企業によって構成された組織。今回のDACとIABとの協力関係はどのように始まったのか。
豊福 DACが直接IABと関わるようになったのは今回が初めてで、Crisp Mediaからの紹介によって実現した。
―Crisp MediaはIABに何年から参加しているのか。
Young 私自身は前職も含めると2001年から、Crisp Mediaとしては2009年からIABと関わってきた(氏はパブリッシャーZiff Davisの元CEO)。IABという業界団体と一緒に活動することで、スマートデバイス、タブレットやスマートフォン向けの広告のレギュレーションを明確にできるというのがメンバー企業として参加する目的のひとつ。これまでも一緒にモバイル広告配信の基準や広告フォーマットをつくってきた。今回、我々がRising Starsに提出した「Adhesion」や「Full Page Flex」が新たなモバイル広告フォーマットとして認定されたが、こういった基準を業界とプレイヤーが認定することで、広告主がより安心して広告を出稿できる仕組みをつくることができると考えている。
「Rising Stars」は、IABによる次世代アドフォーマットの認証。IABが、広告業界各社からコンペティション形式でフォーマットを募集し、候補となったフォーマットは約1年間の市場の需要や広告効果の検証期間を経て、標準アドフォーマット「Rising Stars」と認定される。これまでに「モバイル」「ディスプレイ」「ビデオ」の3領域で認定が行われている。
プレミアム広告の現状
―DACは、プレミアム広告のフォーマットの標準化によるネット広告ビジネスの活性化を目指して、「Empowering the Premium AD Format」という社内プロジェクトを立ち上げている。そして今回、IABの「Rising Stars」のノウハウを活用し、プレミアム広告の活性化を推進していくことになったが、メディアレップとしてプレミアム広告市場の現状をどのようにとらえているのか。
豊福 現在のネット広告は、「リザベーション広告/プレミアム広告」と、「運用型広告/パフォーマンス広告」に大別できる。後者は、DSPやSSPの登場でRTBが可能になるなど技術の進化によって可能になったもので、これは今後も伸びていくと思う。今回、我々が取り組んでいるのは、もう一方の「リザベーション広告/プレミアム広告」。DACは1000社以上の媒体社と広告主とをつなぐメディアレップとして、これらの広告の価値を、Crisp Mediaのようなテクノロジー企業と組んで、しっかり証明していきたいと考えている。
現在は運用型広告が伸びている一方で、プレミアム広告が苦戦しているとも言われているが、Yahoo! JAPANの「トップインパクト」や「ブランドパネル エキスパンドスクリーン」の売れ行きは非常に好調。今後もプレミアム広告市場を伸ばしていくために、IABの「Rising Stars」のようなやり方でフォーマットを整理し、新しいテクノロジーをそこに入れ込んできたい。
たとえば、今回組んだMOATは、IAB「Rising Stars」に準拠したエンゲージメント指標をサポートしている。そのような会社と組むことで、新しいアドテクノロジーで新しい広告の価値をつくり、アカウンタビリティのある広告取引ができるようにしていきたい。