アプリ成功のカギはプロモーション
電車の中でスマートフォンを触っている光景が定着しつつある今日、その国内普及率は約50%に迫っている(IDC調査/2013年6月時点)。生活者のスマートフォン利用時間は今後も増えていくことから、スマートフォン時代の新たなメディアであるアプリの数も飛躍的に増加している。市場にアプリが溢れている中で、開発したアプリを成功させるためには、リリース後のプロモーションがその鍵となる。
アプリプロモーションの主流は、いわゆるリワード広告に代表されるインセンティブプロモーションだ。ユーザーはアプリをインストールすることで、媒体からポイント等のインセンティブが付与されるため、成約につながりやすく、短期間にインストール数を集めることができる。
「WEBでも、インセンティブを用いた広告は典型的手法です。その一方でiOSアプリでは、App Storeのランキングロジックの重要指標が、直近の一定期間内のアプリインストール数のため、リワード広告との親和性が特に高いです。リワード広告でスピーディーにインストールをかき集めて、App Storeのランキングを上げます。そして、そのランキングを見て自然流入してきた質の高いユーザーを獲得します。この流れが、少し前までのアプリプロモーションでは主流でした」(神谷氏)
アプリプロモーションの新トレンド
しかし今日においては、リワード広告、リスティング、アドネットワークなどのプロモーションだけでなく、メディアにレビュー記事が取り上げられるといった、PR的なノンインセンティブプロモーションが欠かせなくなっているという。アプリ数の増加に起因して、インセンティブプロモーションのコストが増加していることからも、バランスよく双方の施策を組み合わせていく重要性が増している。
このような背景を受け、バリューコマースは2012年9月から、アプリデベロッパーがノンインセンティブプロモーションに活用できる「Applis(アプリス)」を提供している。Applisは、スマートフォンやタブレットのアプリのレビューを、「CNET JAPAN」「meet i」「Appliv」「オクトバ」等の約60のメディアへ一括依頼できるサービスである。登録数は順調に増加しており、デベロッパーの数は1月中に2,000を超える見込みだ。
「今やアプリのKPIは、インストール数やCPI(Cost Per Install)だけでなく、DAU(Daily Active Users)を重視するようになってきています。無料アプリの広告収益モデルは言うまでもありませんが、ユーザーが継続的にアプリを利用する中で課金が発生するフリーミアムな収益モデルにおいても、インストール数が多くても、リピート率やアクティブ率が伸びない場合、十分な収益が期待できないためです。
また、全世界のアプリユーザー数が飛躍的に伸びて、アプリの平均ダウンロード数が上がっています。そのため、必然的にApp Storeのランクインに必要なダウンロード数も増えています。以前はリワード施策のインストール数に対して、自然インストール数は5~10倍の数値が見込めましたが、現在はほぼ1対1が相場になっています。これらの理由から、現在ではインセンティブプロモーションをメインに据えながらも、並行してノンインセンティブプロモーションを行い、質の高いユーザーを積極的に獲得していくトレンドが広まっています」(高階氏)
レビューメディアの価値と役割
ノンインセンティブプロモーションの代表的な成果は、アプリのレビューメディアへの掲載だ。特に有力メディアには、ユーザーがアプリをインストールするに当たっての必要な判断材料がそろっており、自ずと利用意向の高いユーザーが多く集まってくるという。
「レビューサイトには、ユーザーがアプリの利用シーンや面白さを瞬時にイメージできてインストールにつなげられるかどうかが求められています。弊社が運営する『Appliv(アプリヴ)』でも、2万以上のアプリを目的ごとに1,500のカテゴリーに分類してターゲットを明確化しています。『記事を読んでダウンロードしてみたらつまらなかった』ということがないように、記事ではただ機能を説明するのではなく、そのアプリでどんな体験ができるかを明示した上で、ユーザーに納得してインストールしてもらうのがレビューメディアの役割だと考えています」(高階氏)
実際、ユーザーが無料アプリを選ぶ際に参考にする情報として、アプリ紹介サイトのレビュー記事が、知人の口コミやソーシャルメディアでの投稿などを抑えて、最も高くなっているという調査結果も出ている。
「また、アプリレビューメディアは様々な立場のデベロッパーに活用していただけるのも利点です。プロモーション予算が潤沢にある大手の場合は、リワード広告で初期インストール数を稼いだ後に、アクティブ率を維持するために活用できます。一方で、アプリの広告予算をあまりかけられない中小企業や個人の場合は、ユーザーを獲得するためのPR施策として活用することができます。メディアとしては、面白いアプリであれば進んで紹介するので、予算の有無にかかわらず、全てのアプリに対して平等な土壌とも言えます」(高階氏)
どうすればレビューメディアに掲載されるのか?
レビューメディアに掲載されるには、主に無料の記事掲載と有料の記事広告がある。まずは無料の記事掲載を狙い、プレスリリース等で新作アプリの情報を伝えるべきだが、ここで重要なポイントが2つあるという。
「1つは、レビューメディアとの窓口を作っておくことです。大きなメディアになるほど、1日に何十件ものプレスリリースが届くので、とても確認しきれません。特にinfoや問い合わせフォームからのメールはスルーされる可能性が高いため、そこへ送付するのは好ましくないでしょう。プレスリリース用のメールアドレスを用意しているメディアも多いので、担当者の名前とともにリスト化しておくと良いですね。
2つ目は、アプリのUSP(Unique Selling Proposition)を明示することです。レビューメディアは、常に面白いアプリ、これから流行るアプリを求めて情報収集しています。ただ“アプリを作ったのでレビューしてください”では、面白いかどうかわかりません。そのため、あらかじめターゲットや独自の強み、類似アプリとの違いをわかりやすく明記しておくことが望ましいです。できれば、なぜこのアプリを作ったのか等の開発経緯も記載しておくといいですね。無料掲載の確率が上がるだけでなく、ユーザーが読んだ場合にも利用シーンをイメージしやすい、質の高いレビューにつながります」(高階氏)
デベロッパーとメディアをつなぐApplis
現状、多くのトラフィックを集めて送客できる大きなレビューメディアはまだ少なく、無料掲載によってインストール数を稼ぐハードルは高いという課題がある。そのため、こうしたレビューメディアを通したノンインセンティブプロモーションを打つにあたり、多くの媒体に一度でアプローチできる「Applis」の活用は有効だ。
「Applisを活用していただく利点は、まず新規参入するアプリデベロッパーなどにとって、なかなか持つことのできない各メディアとの窓口が既にあることです。さらにアプリのPRポイントだけでなく、動画やソーシャル機能など30項目以上の登録フォーマットを用意しているので、それにしたがって記載することで、アプリのUSPを効率良くメディア側に明示できます」(小林氏)
メディアとのつながりをApplisで作り、まずは多くのメディアに取り上げてもらうことを狙い、その中で効果の高いメディアへ有料の記事広告出稿をするという流れは、インセンティブとノンインセンティブを組み合わせた費用対効果の高い施策と言えるだろう。
Applisをハブにしたエコシステムの形成
今後もApplisは、デベロッパーとレビューメディアの両方から要望をコンスタントに吸い取り、付随サービスを増やしていく予定だ。その中の1つが、2013年10月にローンチした「Apllis Market(アプリスマーケット)」である。これはアプリ開発から、デザイン、集客、収益化、効果測定まで、目的に合わせて様々な業者を選定できるサービスだ。
「Applisデベロッパーにアンケートをしたところ、アプリの開発から収益化、効果測定に至るまで、9割以上が外注利用を検討するという回答が得られました。このことから、自社内で全てのアプリのライフサイクルを完結できるデベロッパーは多くないということがうかがえます。一方で外注先となるソリューションサービスを提供する企業側からApplisのデベロッパーに対して、自社サービスをアピールしたいというご相談をいただく機会も多々あり、そのような要望に応える形でApplis Marketをローンチしました。今後もあらゆる面でデベロッパーやレビューメディアと連携を強めて、Applisをハブにしたエコシステムを構築し、アプリビジネスを循環できるプラットフォームを築いていきます」(小林氏)