ネット事業における「ワンストップ&ワンID」
セブン&アイのネット事業を見てみましょう。1999年、ソフトバンク、セブン-イレブン・ジャパン、トーハン、ヤフーの4社が、セブンネットショッピングの前身であるイー・ショッピング・ブックスを設立。ショッピングサイト「イーエスブックス」で購入商品をコンビニエンスストアで受け取れるサービスを日本初導入しました。2007年に本格展開を開始したイトーヨーカドーの「ネットスーパー」は店舗の商圏内の顧客から注文を受け、店舗から商品を届けるサービスで、2013年2月末時点で会員数は145万人に達しています。
ほかにもネット通販サイトを複数展開していますが、2012年7月にグループ各社の通販サイトを一本化し、グループ全社で扱う300万点の商品すべてをインターネットで購入できるECサイト「セブンネットショッピング」を構築しました。現在、そごう・西武が提供する「e.デパート」、イトーヨーカドーの「ネットスーパー」、セブン‐イレブンの食事配送サービス「セブンミール」、ベビー・マタニティ用品専門店「アカチャンホンポ」、「チケットぴあ」「セブン旅net」のサイトが集約され、サイト別だったIDも統合。「ワンストップ&ワンID」を実現しています。
また、Wi-Fiサービス「セブンスポット」を店舗で提供し、限定コンテンツやお得なサービスで集客につなげています。2014年1月には、紙の雑誌「セブンネット生活」を無料配布。アプリをインストールしたスマートフォンを紙面の商品写真にかざすと「セブンネットショッピング」にある商品販売ページを瞬時に表示することができます。
こうした動きにともない、先ごろグループのネット事業を担っていた2社の合併が発表されました。セブン&アイ・ネットメディアを存続会社とし、セブンネットショッピングを消滅会社とする吸収合併によって、オムニチャネル戦略推進の中心的な役割を担う会社を明確にしたのです。
オムニチャネルのその先で
セブン&アイは、実店舗とネットの双方で事業の拡張と統合、効率化を行い、2008年ころからリアル店舗とネット店舗間の相互総客によるシナジー効果の創出を謳うようになりました。そして2013年、オムニチャネル戦略を打ち出すに至ったのです。
「オムニチャネル」という言葉が指すものは、実店舗・自社ECを問わず、ユーザーが接触するあらゆるチャネルを購買機会・マーケティング機会とすることです。ネットショッピングが当たり前になり、その手法が洗練されるにしたがって、実店舗による小売業は旧態依然としているようにも見えていました。しかし、店舗で得られるさまざまなデータを活用できる環境が整ったいま、店舗を持つ小売業者はネット専業の小売業者とは違う可能性を追求し始めたのです。
一見すると、ここ最近のセブン&アイの買収攻勢は、その意図がつかみにくい部分もありますが、こうした背景を踏まえていくと、セブン‐イレブン、イトーヨーカードーに加え、M&Aによりグループに加わった企業群により、幼児から高齢者に至るあらゆる消費者層を押さえる準備が整ったということはできると思います。