ひとつのIDで、どれだけの利便性を提供できるか
今回のオムニチャネル戦略の中心となっているセブンネットショッピングの鈴木康弘社長は、今後、電子マネーnanacoやその他のポイントもグループ横断で利用可能にしていくとコメントしています。これからはオンライン・オフラインを問わず、ひとつのIDで決済やポイント管理が可能になっていくでしょう。この“ID”の捉え方が、今後、非常に重要になってくると考えられます。
Amazonは2013年10月9日に、“Login and Pay with Amazon”という決済サービスを米国で発表します(国内は未対応)。Amazon以外のサイトで買う場合でも、すでにAmazonに登録してあるクレジット情報などを呼び出して、そのまま決済することができます。ほぼ時を同じくして楽天も10月11日に“楽天あんしん支払いサービス”で「かんたん登録オプション」を発表しました。
Amazonは、今のところまだオンラインの世界に閉じていますが、楽天はグループ内に電子マネー「Edy」を持っています。2014年秋からはサークルKサンクスでも楽天スーパーポイントが利用可能になる旨を発表しており、実店舗消費の世界へ進出しています。
消費者は、一度クレジット情報や住所などを登録したら、あとは利用頻度の高いアカウントで各サービスを利用したいと考えるはずです。現代では、多様なネットサービス・ポイントプログラムが存在し、ユーザーは多数のID・パスワードの管理に追われています。Amazonや楽天のようなシングルサインオン型のサービスが増えてくると、利用頻度が低いアカウントは今後淘汰され、いかにユーザーにとって「意味のある」IDであるかが重要になってくるのです。
IDによる囲い込みが勝者を決める
コンビニエンスストアは、非常に強いビジネス業態ですが、国内市場には限りがあり、長い目で見た場合には「コンビニ以外の付加価値」をどう打ち出していくかが顧客囲い込みのポイントとなるでしょう。そこで、オン/オフ問わず、できるだけ日々の消費の中で存在感を出していくことが重要になります。
最終的にすべて同じIDでポイント管理・決済まで行ってもらうことで、そこに対するマーケティングの機会も獲得する。強力なIDを持つ事業者は、決済・販促において、すべての果実を手にできる可能性があります。ネットとリアルにはりめぐらされる顧客接点とそれを集約する「ひとつのID」。オムニチャネルやデジタル化のゴールはこの部分に向かっていくことになると考えます。
しかし、ネットと店舗の融合はまだ始まったばかり。さまざまなプレイヤーがそれぞれのアプローチで新たな試みを行っています。今後も国内動向からは眼を離せません。次回は、デジタル化する店舗で、買物という行為がどのように変わりつつあるのかをご紹介します。