国内における店舗スマート化の課題
USのみならず韓国においても、こういったスマートデバイスを活用したの取り組みは進んでいます。日本では、おサイフケータイなど、携帯端末を使った支払いがいち早く進んだにもかかわらず、大手小売や外食の現場では、スマートフォンの時代に即したサービスの導入に足踏みしている感があります。背景には、日本固有の事情があると考えられます。
まず大きいのは、日本ではいちはやく電子マネーやおサイフケータイなどのICチップ認証型の方式が浸透していたことです。アップルはこの方式に準拠する方針を今のところ出さないため、iPhoneにおいてはNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)などの認証方式が使えません。ということは、光学スキャナーでスマホなどの画面上のバーコードを読み取って端末を認証する必要があります。
光学スキャナーにおける認証方式は、一次元コード(バーコード)はもとより、二次元コード(QRコード)もはるか昔から存在しています。そのため「今さらそこに戻るのか」という議論がPOSレジ業界や大手小売り・外食企業の情報システムの現場ではよく行われています。

実際のところ、iPhone/Andoroidの双方のユーザーを認証するには、スキャナーを使うしかないのですが、いまだに電子マネーの利用者数や決済額も伸びており、すべての課題に応えていくには、レジに両方対応できる装置を置くしかありません。これは設備投資もかかりますし、すでに米国よりも高度化・複雑化している日本の小売・外食の現場を悩ませるポイントになっています。
進化する消費者に応えられるか
ただし、消費者が日常的に使う端末におけるiOS/Andoroidの存在感は高まっています。米国発祥のこれらの端末・OSプラットフォームが普及すればするほど、日本独自の過去の文法は通じにくくなっていきます。難しい決断にはなっていきますが、ひたすら利便性を求めるユーザーを実店舗での消費行動に落とし込むためにどのように捉えるか、何が最適な解となるか、まさに見極めが必要なタイミングに来ていると考えられます。
重要なのは「オンラインか、オフラインか」という議論ではなく、自社に最適なオペレーションを生み出し、最良の顧客体験を提供する上で、どんな手法を取りうるのか、ということだと思います。必要がないのに無理にオンラインに投資する必要はありませんが、時に思い切った戦略を取ることも必要になるかもしれません。